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ドコモ・モバイル・サイエンス賞

移動通信・情報通信の研究開発等の業績に対する褒賞事業

Winner / Ceremony

第13回(2014年)

第13回ドコモ・モバイル・サイエンス賞 授賞式

情報通信技術・移動通信技術の発展と若手研究者育成を目的とする「第13回ドコモ・モバイル・サイエンス賞」の授賞式を2014年10月17日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催しました。今回は28件の応募があり、選考委員会(選考委員長:東京大学名誉教授・羽鳥光俊氏)での厳正かつ公平な審査の結果、先端技術部門で優秀賞1件、基礎科学部門で優秀賞1件、社会科学部門で奨励賞2件、合計4件・5名が選ばれました。授賞式には、文部科学省 研究振興局長 常盤豊様、NTTドコモ代表取締役社長 加藤薰様をはじめ、多くのご来賓にご出席いただきました。

先端技術部門の受賞記事です

優秀賞サイバーとフィジカルの境界におけるセキュリティ・プライバシー保護技術の研究開発

国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 教授

越前 功(エチゼン イサオ)氏

授賞概要

越前氏は、人間の視覚と、スマートフォンやタブレット等の高機能なモバイルデバイスとの分光感度特性の違いを利用して、画面盗撮を防止する技術、および人物映像のプライバシーを保護する技術を、世界で初めて開発した。今後の社会では、高機能モバイルデバイスに、仕事や日常生活が依存する度合いがますます増大する。本技術が、盗撮による著作権侵害や情報漏えいを防ぎ、顔検出無効化などのプライバシー保護技術として実用化されていくことで、社会に与えるインパクトは大変大きいと期待される。

授賞理由

スマホやタブレット等、高機能なモバイル端末の普及により、サイバー空間とフィジカル空間にまたがる領域で発生するセキュリティやプライバシーの問題の解決が重要な課題となっている。越前氏は、この問題にいち早く取り組み、人間の視覚とデバイスの感度の違いを利用して画面の盗撮による著作権侵害や情報漏えいを防止する技術、および人物映像のプライバシー保護技術を、世界で初めて開発した。

盗撮防止技術や人物映像のプライバシー保護技術は実用化に向けて開発が進められており、人物映像のプライバシー保護については眼鏡メーカーとの共同開発により、2014年中の製品化が見込まれている。

人間の視覚と撮像デバイスの分光感度特性の違いを明確化し、盗撮防止、顔検出無効化などの応用を含め多数の論文を発表して多くの賞を受賞するなど、学問的な貢献も大きい。

今後の社会では、高機能なモバイルデバイスに仕事や日常生活が依存する度合いがますます増大すると予想される。本技術が実用化され、そのマイナス面を防止することが可能となれば、社会へのインパクトは大変大きいと期待される。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞 先端技術部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

受賞者の言葉

越前 功氏

わたしは1997年から不正コピー防止にさまざまな角度から取り組んできた。その積み重ねを経て2009年に開発したのが、画面の盗撮を防止する技術である。盗撮者側のカメラに新たな機能を追加することなく、盗撮画像の劣化により盗撮を無効化する世界初の技術である。2012年には、被盗撮者が特殊なメガネを装着するだけで、サイバー空間での人物同定をできなくするプライバシー保護技術を開発した。今後も研鑽を積んで新たなセキュリティやプライバシー問題に取り組み、社会に貢献したい。

基礎科学部門の受賞記事です

優秀賞ナノ磁性体を用いた新規スピンデバイスの基礎と応用展開

京都大学 化学研究所 教授

小野 輝男(オノ テルオ)氏

授賞概要

小野氏は、強磁性細線中の磁壁を電流で動かして磁化状態を制御する技術、および強磁性円盤に存在する磁気コアの向きを電流によって制御する技術を開発した。これにより、磁気デバイスの磁化の向きを電流のみで制御するというスピンデバイスの新たな基盤技術を、世界に先駆けて構築した。電流による磁化制御技術は素子を微細化するとともに必要な電流を減少させるため、研究が進展すれば、モバイルデバイスやウエアラブルデバイスに必要な電力削減や高速なナノデバイス開発が期待される。

授賞理由

小野氏は、強磁性細線中の磁壁を電流で動かして、磁性細線の磁化状態を制御する技術を開発。また、強磁性円盤に存在する磁気コアの向きを電流によって制御する技術を開発した。これにより、従来は磁場によって制御されてきた磁気デバイスの磁化の向きを、電流のみで制御するというスピンデバイスの新たな基盤技術を、世界に先駆けて構築した。

「強磁性細線中の磁壁を電流で移動制御する技術」は、IBMが磁性細線中に情報となる磁壁を多数導入して電流で動かす機構の新しいストレージを提案するなど、世界的に大きなインパクトを与えた。また、「円盤状磁石に存在する磁気コアの向きを電流によって制御する技術」は、学術雑誌Nature Materialsの表紙に掲載されるなど、学術的にも注目されている。本研究の2つの業績の端緒となった論文の引用数は極めて多く、学問的貢献は大きい。

電流による磁化制御技術は素子を微細化するとともに必要な電流を減少させるため、研究がさらに進展すれば、モバイルデバイスやウエアラブルデバイスに必要な電力削減や高速なナノデバイスの開発が期待される。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

受賞者の言葉

小野 輝男 氏

磁石を用いて情報を記録する装置の代表格がHDD(ハードディスクドライブ)だ。HDDは、常に高速回転しており、大きな電力を消費する。特に、HDDが集約的に設置されているデータセンターの電力消費は膨大である。わたしたちの基礎研究で見出された技術を用いれば、HDDの消費電力は100~1000分の1に削減でき、アクセススピードは1000倍速くなると言われている。10年後をめどに実際の新デバイスを提供して、深刻なデータセンター電力消費の問題に貢献することをめざしている。

社会科学部門の受賞記事です

奨励賞音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新に関する研究

<グループ代表>
鳥居 健太郎(トリイ ケンタロウ)氏 株式会社東芝 ヘルスケア社 参事

山本 高敬(ヤマモト タカノリ)氏 株式会社東芝 研究開発センター 研究主務

授賞概要

鳥居氏らは、独立行政法人科学技術振興機構の社会技術研究開発センターによる問題解決型サービス科学研究プログラムのもと、音声つぶやきとテキストマイニングを利用し、記録や双方向の情報共有を実現するコミュニケーションシステムを開発した。医療・介護スタッフはスマートフォンに音声でつぶやくだけで、手がふさがりがちなケア中にも記録と連絡の両方が可能となる。本技術は、ケアの改善に役立つとともに、「安心・安全」が求められる設備保守等さまざまな分野への応用が期待できる。

授賞理由

鳥居氏らは、独立行政法人科学技術振興機構の社会技術研究開発センターによる問題解決型サービス科学研究プログラムのもと、音声つぶやきとテキストマイニングを利用し、記録や双方向の情報共有を実現するコミュニケーションシステムを開発した。スタッフはヘッドセットを着用してつぶやくだけで、システムが自動的に発話中の単語や位置などをタグとして音声とともに記録し、適切な範囲の職員に配信する。これにより、手がふさがりがちなケア中にも記録と連絡の両方が可能となり、介護施設における実験では、従来は記録されずに見過ごされてきた細かな記録が補足され、ケアの改善に役立つことが確認されている。また、つぶやきの配信により、他職員の状況把握や応援依頼も可能となった点も評価したい。

このシステムが社会に普及すれば、医療・介護現場で必要とされている多職種間情報連携への貢献が期待されるだけでなく、「安心・安全」を必須要件とする設備保守等さまざまな分野への活用、応用が期待できることから、社会的インパクトは大きいと考えられる。

受賞者の言葉

鳥居 健太郎氏と山本 高敬氏

人が人に対してサービスを行う現場では、人にしか察知できない細やかな観察や気づきがある。両手がふさがっているケアの現場でも気軽に使えるスマートフォン型のシステムの開発は、こうした貴重な情報を活用して、ケアの品質を高めるための大きな可能性を開くと思う。われわれの研究では、医療・介護の現場における「簡単便利」に徹底的にこだわっている。また情報が流通しやすくなると、今度は情報の洪水が発生する。真のサービス品質向上に役立つ情報のあり方も追求していきたい。

奨励賞群衆の批判的思考を活用するICTデザインの認知科学的研究

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 特任研究員

田中 優子 (タナカ ユウコ)氏

授賞概要

東日本大震災では、不特定多数の一般ユーザーが発信する情報によって多くの人命が守られた一方、デマが拡散して混乱を招いた。田中氏は、情報提示順序を工夫し、他者の批判的思考を先に提示することで、後続デマへの心理的評価が低下し、デマ拡散行動を抑制できることを実証的に明らかにした。情報の信頼性を確保する科学的方法論が確立されれば、風評等の社会問題解決への貢献が期待される。また、批判的思考を活用するICTデザインは、クラウドサービスでの商用化も期待される。

授賞理由

災害等の緊急時に情報通信が果たす役割は極めて大きい。先の東日本大震災では、不特定多数の一般ユーザーが発信する情報によって多くの人命が守られた一方、デマや風評が拡散し社会的混乱を招いた。田中氏は、情報提示順序を工夫し、他者の批判的思考を先に提示することで、後続のデマへの心理的評価が低下し、デマの拡散行動が抑制できることを実証的に明らかにした。実際に東日本大震災時にSNS上で伝播したデマを用いて、通常のデザインの場合とデマを低下させるICTデザインの場合のデマの拡散行動を比較分析し、流通する情報の質を高める上でICTデザインが大きく寄与できる可能性を示した点を評価したい。

情報の信頼性を確保する科学的方法論が確立されれば、風評等の社会問題解決への貢献が期待される。また、批判的思考を活用するICTデザインを、クラウドから創造的発想を抽出する手法として応用・開発したクラウドソーシング・システムは、商用化への取り組みもなされていることから、ビジネスへの貢献が期待される。

受賞者の言葉

田中 優子 氏

「批判的思考」とは、根拠や基準などに基づいて情報を吟味することであり、情報化社会に不可欠な思考のひとつである。しかし個人が、膨大な情報をすべて吟味するのは困難だ。そこで、モバイルテクノロジーを通じてつながっている他者の批判的なアイデアを活用できるのではないかと考え、その効果を実証したのが今回の研究である。今後も、ICTデザインや検索システムのアルゴリズムを工夫することでわたしたちの認知プロセスをより良くし、ひいては情報の質を向上させる研究に取り組んでいく。

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