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ドコモ市民活動団体助成事業

公募による市民活動団体への活動資金の助成事業

Subsidized List

2024年度 ドコモ市民活動助成(子ども分野)の選考を終えて

選考委員長 川北 秀人

はじめに

ドコモ市民活動団体助成事業は、将来の担い手である子どもたちの健やかな育ちを応援する活動に取り組む全国のNPOに対して、2003年から21年間で延べ1116団体に約6億3千万円の助成を行いました。さらに、2018年度からは、児童を対象とした深刻な虐待事件が継続的に発生している状況を踏まえて、「児童虐待防止活動」を緊急的かつ重要なテーマと認識し、「特定課題」と位置付けて、同活動に取り組む団体に対して積極的な支援を継続的に実施しています。

応募状況

本年度は、2024年2月20日から3月31日までの公募期間中に、「子どもの健全な育成を支援する活動」113件、「経済的困難を抱える子どもを支援する活動」33件、計146団体(そのうち、継続20団体)からご応募いただき、昨年度から5件増えました。お忙しい中で申請書類をお取りまとめくださった団体の皆様に、深くお礼申し上げます。
今年度いただいた申請の傾向として、以下の点が挙げられます。

  • 申請件数の多い活動テーマは、健全育成では「居場所づくり」が27件(昨年比8件増)、次に「不登校・ひきこもり」が20件(昨年比7件減)、経済的困難では「生活支援」が18件、次に「学習支援」が8件でした。

  • 「居場所づくり」に関する申請は昨年より8件増加し、主な内容は困難な課題に直面している子ども(不登校、家庭に安心できる場がない、貧困等)への学び・食・体験・多世代交流・親の相談支援の場(オンライン含む)でした。しかし多くの申請が既存事業の維持・継続を目的としており、地域特有の課題や受益者の現状とニーズが的確に捉えられておらず、評価が低くなりました。

  • 「不登校・ひきこもり」に関する申請、内容の大半はフリースクールの維持・継続を目的とした提案であり、物価高の中で利用料負担が困難な家庭も多く、利用者増に繋がらず運営費等の確保に苦慮していることが窺えました。不登校の児童生徒数は、コロナ禍を経てさらに増加傾向にあり、さまざまな事情で学校に行けない状況に直面した子どもへの学びの保障にむけ、文部科学大臣メッセージ 「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」の発表以降、フリースクールの運営側と利用者側への補助金制度等を行う自治体も増えています。今後はさらに、行政、学校のみならず、民間(NPO・企業等)との連携による支援への期待が高まっていることから、事業を安定的に運営する仕組みづくり(情報発信力の強化やマニュアル作り等)に挑戦しながら、子どものコミュニケーション力や自己肯定感向上、保護者同士の情報共有や相談支援等、不登校児童生徒の社会的自立にむけた付加価値が期待できる申請は、評価が高くなりました。

  • 経済的困難に関する申請は、「生活支援」が18件(昨年比3件増)、「学習支援」が8件(昨年比19件減)でした。

  • 「生活支援」では、子ども食堂の運営費を目的とした申請が14件にのぼるなど、大半が物価高の影響により食品購入や人件費等の運営費のみにとどまる申請が多く、子どもの自己肯定感やコミュニケーション力向上等の将来の自立に向けて生きる力を育む等の付加価値が期待される案件は少数にとどまっています。

  • 「児童虐待・DV」では、母親の育児の孤立化や不安軽減のための虐待予防的支援(ショートステイ、相談支援、母親同士の交流の場)に関する申請が8件であり、コロナ禍においては、母親同士の交友関係を築くことが難しい状況であったが、コロナ禍が明けた現在においても、母親の育児の孤独・孤立を解消するための支援の必要性が高まっていることが窺えました。

  • 全国の地区ごとの申請件数が全体に占める割合は、高い順に関東甲信越(53件、36.3%)、関西(28件、19.2%)、九州(20件、13.7%)、東海(12件、8.2%)、四国(9件、6.2%)、中国、東北(各8件、5.5%)、北海道(7件、4.8%)、北陸(1件、0.7%)でした。昨年度に比べ、九州からの申請が増えました。

選考のプロセス

選考にあたっては、まず一次審査(書類審査)として、事務局(3名)が募集要項に示した「選考のポイント(5項目)」に基づいて全146件の申請内容を確認し、評価表を用いて採点しました。その結果、評価の高かった60件を選出し、これらを選考委員による二次審査の対象としました。

二次審査では、選考委員が対象案件全ての申請内容を確認し、採点を行いました。その際に各委員から出された質問等については、事務局が申請団体に対して書面によるヒアリングを実施し、選出された57団体のご提案を選考委員会で審議しました。

この結果、「子どもの健全な育成を支援する活動」で24団体(継続6団体)、「経済的困難を抱える子どもを支援する活動」で7団体(継続3団体)、「特定課題(児童虐待防止)の活動」で5団体(継続2団体)、合計36団体を選出しました。このうち、活動内容が波及効果を期待される提案に対しては、報告会の開催や報告書の作成・活用等に関わる費用として、当初申請額の20%を増額助成することとし、4団体を選定しました。

その後、1団体から辞退の申し出があったため、最終的に35団体(継続11団体)に総額31,579,000円を助成することが決定しました。

選考にあたって

本助成事業では、採択後、申請内容をベースに、あらためて1年間の活動目標を設定していただく枠組みとなっていることから、申請事業や団体の成長に結び付けるために必要な組織基盤(人材育成、自主財源率を高める工夫等)の充実等について、目標や計画の一部を見直していただく「条件付き採択」を実施しており、今年度は24件が対象となりました。

日本では、子どもを取り巻く社会課題は一層深刻化していると同時に、長期に及ぶ少子高齢化のため、ソーシャルセクターにおいても、支援活動を維持するための担い手不足が深刻な課題となっています。そのため、今年度は、少ない人数でも支援の質を維持し、効果的・効率的に業務を進めるための担い手育成、資金調達の仕組みづくり、広報力強化等の「活動基盤強化」への取り組みについて積極的に支援することとし、選考委員より具体的なアドバイスをさせていただきました。例えば、助成の効果を高めるための連携団体の紹介、ニーズに対応した支援手法、人数も少なく内部研修の機会をつくりにくい現場の担い手育成の工夫(メンバーの習熟度の達成度を理解する管理表の作成、団体内での振り返りの機会増)等についてです。

また、採択団体の皆様には、ニーズに即した明確な目標設定と成果の「可視化」をお願いしました。明確な目標を設定することで、子どもたち一人ひとりに有効なプログラムか否かについて、団体メンバーで定期的に振り返りを行っていただき、事業終了後も、「自分たちの事業は、どれだけ効果があったのか?」、「当初たてた仮説の検証結果はどうだったのか?」等、効果測定や仮説の確からしさなどを確認しながら、今後の支援の充実・進化、さらには、皆様の実績を社会にアピールするきっかけにしていただくことを期待します。
今後も、採択団体の皆様とのコミュニケーションを重ねながら、より良い社会づくりに向け、1年間申請事業を共に進めていただきたいと思っています。

最後に、今回、助成対象に選ばれた団体の皆様には、事業の評価と改善を繰り返しながら、ご提案いただいた成果が実現されることを期待いたします。一方、惜しくも助成対象とならなかった団体のみなさんには、来年の応募にも、ぜひ再度挑戦していただくことを期待いたします。

選考委員

委員長 川北 秀人 IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人

委員 村木 厚子 津田塾大学特任教授

委員 涌井 道子 株式会社NTTドコモサステナビリティ推進室長

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