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ドコモ・モバイル・サイエンス賞

移動通信・情報通信の研究開発等の業績に対する褒賞事業

Winner / Ceremony

第23回(2024年)

このたび、「第23回ドコモ・モバイル・サイエンス賞」の3部門に応募いただいた研究業績の中から、選考委員会(選考委員長:東京大学名誉教授・伊藤元重氏)における厳正かつ公平な審査の結果「先端技術部門」「基礎科学部門」「社会科学部門」の優秀賞および社会科学部門の選考委員特別賞受賞者を決定しましたので発表いたします。

先端技術部門の受賞記事です

優秀賞地上と宇宙をつなぐ無線通信機の研究

東京科学大学 総合研究院 准教授
白根 篤史(シラネ アツシ)氏

授賞理由

白根氏は、小型衛星に搭載可能な、低消費電力・高放射線耐性・高速化技術を備えた無線通信機の研究を実施してきた。

代表的な成果としては、従来の無線機の半分以下の消費電力を達成したKa帯フェーズドアレイ無線機、航空宇宙用無線機の10倍以上のレベルの高放射線耐性を備えたフェーズドアレイ無線機などがある。

これらの研究成果は衛星コンステレーションによる無線通信ネットワークの基礎となる。

開発した衛星搭載用無線機は2022年にJAXAの革新的衛星技術実証3号機に搭載され、さらに4号機においても打ち上げが決まっている。半導体分野のトップカンファレンスであるISSCCでも論文2編が採択されており、国際的に一定の評価を得ている。

ミリ波や高い周波数でのフェーズドアレイや、小型衛星でのコンステレーション分野において、世界における日本の研究の地位確立のため、研究の発展を応援したい。

基礎科学部門の受賞記事です

優秀賞熱フォノンエンジニアリングの先導的研究

東京大学 生産技術研究所 教授
野村 政宏(ノムラ マサヒロ)氏

授賞理由

光学の視点から伝熱工学にアプローチし、フォノン(熱を運ぶ粒子)エンジニアリングによる半導体熱制御技術の研究を推進している。熱に指向性を付与し、これを利用して熱流制御を行う点に独創性・新規性が認められる。

受賞や国際学会での講演実績等も多く、国内外で高い注目を集め、本分野をリードしているといえる。

先端半導体の高性能化で深刻化している放熱問題の緩和につながり、将来的にますます高密度な半導体に依存するモバイル端末機器での実用化が大いに期待される。

また、応用物理学会内でフォノンエンジニアリング研究グループを設立、350名規模のフォノンエンジニアリング研究会に昇格させて委員長を務め、分野の活性化と国際競争力強化に貢献するといった学界での活動も評価できる。

社会科学部門の受賞記事です

優秀賞フェイクニュース現象に関する計算社会科学の研究

東京科学大学 環境・社会理工学院 教授
笹原 和俊 (ササハラ カズトシ)氏

授賞理由

計算モデルとビッグデータ分析を用いて、人間の認知特性とプラットフォームの相互作用で意見の分極化と社会的分断が生じ、エコーチェンバーが発生する仕組みを明らかにした。

当該分野における数理的技法の導入の必要性が高いところ、メトリクスを整備し、エコーチェンバーを解決するための1つのアプローチを示した点で新規性・革新性が高いと評価できる。

ハイレベルな国際会議での発表実績、電気通信普及財団賞を初めとする多数の受賞など、国内外で高く評価されている。図書執筆や講演などの一般向け情報発信にも積極的であり、社会への貢献度も高いといえる。

選考委員特別賞認知的健康につながるコミュニケーション支援技術の開発

理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー
大武 美保子(オオタケ ミホコ)氏

授賞理由

社会的交流が多い人や言語能力が高い人が、加齢に伴う認知機能低下や、認知症発症リスクが小さいことが知られているが、認知機能維持に役立つコミュニケーションの特徴、条件は明らかでなかった。

大武氏は、会話と認知機能の関係性という心理的側面に着目し、高齢者の認知症予防のために、加齢とともに低下しやすい認知機能を活用するルールを加えた会話支援手法を独自に考案した。また、生活の中で取り入れることができる技術の開発を目指し、当事者と共に利用評価を重ね、技術を改良してきた。

大武氏の研究は、喫緊の社会的課題である認知症に対する解決策を提示している点で、社会への貢献・将来的影響が期待される。最終的に優秀賞には選出されなかったものの、本研究は本年段階でも何らかの形で評価し、次の展開を期待したいとの意見があり、選考委員特別賞の授与を決定した。

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