2024年度 ドコモ市民活動助成(環境分野)の選考を終えてSubsidized List
2024年度 ドコモ市民活動助成(環境分野)の選考を終えて
選考委員長 川北 秀人
はじめに
ドコモ市民活動団体助成事業は、子どもの健全育成と生物多様性の保全を推進する全国の市民活動を応援するプログラムです。環境分野への助成は、ドコモ創立20周年事業の一環として、2012年から4年間限定で実施しましたが、23年度より、未来の子どもたちに「人・自然・動植物」等と共生する自然豊かな社会環境の中で健やかに育ってほしいとの思いから、新たに環境保全をテーマとした、「生物多様性の保全を推進する活動」を追加しました。
今年度は、環境省の「30by30」(2030年までに国土の30%以上を保全)に賛同し、OECM(保護地域以外の生物多様性保全に資する地域)拡大に向けた「自然共生サイト」認定制度への申請をめざす活動や、認定後の活動の進化・定着を支援する「30by30目標達成に貢献する活動」を追加しました。
応募状況
本年度は、2024年2月20日から3月31日までの公募期間中に、「生物多様性の保全を推進する活動」24件(継続6件)、「30by30目標達成に貢献する活動」14件(辞退1件含む)、計38団体からご応募いただきました。お忙しい中で申請書類をお取りまとめくださった団体のみなさまに、深くお礼申し上げます。
生物多様性の保全を推進する活動
①自然環境保全活動4件、②絶滅危惧種等の保護活動2件、③環境学習活動が15件、④その他の活動が2件でした。全国の地区ごとの申請件数と全体の割合は、高い順に関東甲信越(10件、42%)、九州(4件、17%)、関西(3件、13%)、東海・中国(各2件、16%)、北海道・北陸・四国(各1件,12%)でした。
30by30目標達成に貢献する活動
①「自然共生サイト」認定制度への申請・登録をめざす活動が8件、②自然共生サイト認定後の活動のステップアップを目的とした活動は6件でした。全国の地区ごとの申請件数は、高い順に九州(5件、36%)、関東甲信越(3件、21%)、北海道・東北(各2件、28%)、北陸・関西・中国(各1件,14%)、東海・四国は0件でした。
選考のプロセス
選考にあたっては、募集要項に示した「選考のポイント(4項目)」に基づいて、事務局(3名)と選考委員が全ての申請内容を確認し、評価表を用いて採点を行いました。また、各委員からの質問については、事務局が申請団体に対して書面によるヒアリングを実施し、選考委員会で審議しました。この結果、「生物多様性の保全を推進する活動」で9団体(継続4団体、単年度助成)、「30by30目標達成に貢献する活動」で2団体(複数年助成)の計11団体(継続4団体)に総額10,163,000円を助成することが決定しました。
選考にあたって
生物多様性の保全を推進する活動
活動テーマ3「生物多様性の保全を推進する活動」において、最も多く申請をいただいたテーマは、「環境学習活動」(15件)でした。具体的には、親子で参加できる体験学習会や自然観察会、環境教育教材の作成、地域住民を巻き込んだ里山整備活動が中心であり、各地域の生物多様性保全上の課題について、根拠となるデータとともに明確に示された案件が高く評価されました。
一方で、目標については、イベント参加者数の増加や環境意識の向上を重視する内容となっており、申請事業が生物多様性の保全・回復にどのような効果をもたらすかが不明瞭であったことから、目標と指標の見直しを採択条件とし、団体内での再検討をお願いしました。
30by30目標達成に貢献する活動
活動テーマ4「30by30目標達成に貢献する活動」は複数年(2年)にわたる助成であり、自然共生サイト認定後のステップアップを目的とした2団体を採択しました。
これらの取り組みは、NPOが主体となり、地域全体の自然を活用しながら、自治体、地元企業、市民等と共に新たな生物多様性の価値を生みだしている点で、30by30の目的である生物多様性の保全と持続可能な社会の実現に向けたロールモデルとして期待できると判断し、採択しました。
また、本活動テーマにおいては、助成期間中に半年ごとに定例ミーティング(オンライン)を開催し、採択団体と選考委員がコミュニケーションを図りながら活動の進捗を確認・助言を行う場を設ける予定です。同じ分野で活動する団体同士の連携を深め、知見を共有し、助成事業終了後も互いに支え合う関係を築いていただきたいと考えています。
共通課題
今年度の採択団体の皆様には、助成期間終了後も持続的な環境保全活動を実現するために、担い手育成や資金調達の仕組みづくりなど「活動基盤強化」に力を注いでいただくことをお願いしました。
日本国内では、「生物多様性増進活動促進法案」が2024年4月11日に国会で可決されるなど、生物多様性の損失を防ぎ、回復軌道にのせる「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた機運が高まっています。しかし、人口減少や高齢化により、環境保全活動を支える人材も不足し、後継者の育成が難しい状況です。さらに、気候変動による異常気象や自然災害の多発・激甚化などにより、生物多様性の危機の深刻さは加速しています。
このような状況を踏まえ、助成期間中には、「人材確保と育成(カリキュラムやテキストの作成を含む)」や「情報発信」に取り組んでいただくよう、選考委員からお伝えし、それらを助成期間中の目標に盛り込んでいただくことを条件としました。例えば、情報発信に関しては、ウェブサイトやSNSでの活動報告に加え、活動地域の生物多様性保全の価値を定量的または定性的に「見える化」し、その重要性を広くアピールすることで、共感者を増やし、財源確保に繋げることが期待できます。なお、活動テーマ4「30by30目標達成に貢献する活動」への申請に関しては、上記の考えに基づき、申請時の必須条件としました。この機会に、組織の持続可能性を高めるために必要な人材育成や情報発信を進めていただきたいと考えています。
最後に、今回助成対象に選ばれた団体の皆様には、事業の評価と改善を繰り返しながら、ご提案いただいた成果が実現されることを期待しています。一方、惜しくも助成対象とならなかった団体の皆様には、来年の応募にもぜひ再度挑戦していただけることを期待しています。
選考委員
委員長 川北 秀人 IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人
委員 渡辺綱男 一般社団法人 自然環境研究センター上級研究員
委員 涌井 道子 株式会社NTTドコモサステナビリティ推進室長