2023年度 ドコモ市民活動助成の選考を終えてSubsidized List
2023年度 ドコモ市民活動助成の選考を終えて
選考委員長 川北 秀人
はじめに
今年度のドコモ市民活動団体助成事業は、従来から取り組んできた、将来の担い手である子どもの健全な育成を支援する活動、経済的困難を抱える子どもを支援する活動に加え、本助成20年の節目となる今年度から、新たなテーマとして、生物多様性が保全された豊かな環境を子どもたちの未来にひきつぐことを目的として、「生物多様性の保全に関する活動」を追加し、「人・自然・動植物など」が共生する自然豊かな社会環境づくりに寄与する活動を応援することとしました。
応募状況
本年度は、2月20日から3月31日までの公募期間において、「生物多様性の保全に関する活動」に27団体から、「子ども分野に関する活動」に141団体から、それぞれご応募いただきました。
なお、ご応募いただいた申請の傾向としては、以下の点が挙げられます。
① 生物多様性の保全に関する活動
27件の内訳として、テーマ別では、森林の保全、里地・里山づくり、海辺・沿岸における活動といった自然環境の保全活動に関するものが12件、自然体験プログラムなどの環境学習や自然伝承等の環境学習活動に関するものが9件、絶滅・減少の恐れがある野生生物保護や生態調査、地域の希少生物保護、特定外来生物の駆除といった絶滅危惧種等の保護活動が3件、その他が3件でした。
また、全国の地区ごとの申請件数と全体に占める割合は、高い順に関東甲信越(17件,63%)、東海(3件,11.1%)、東北(2件,7.4%)、北陸・関西・中国・四国・九州(各1件,3.7%)となっており、北海道からの申請は残念ながら0件でした。
② 子ども分野に関する活動
テーマ別では、「子どもの健全な育成を支援する活動」が92件、「経済的困難を抱える子どもを支援する活動」が49件となっており、ご応募いただいた申請の傾向としては、以下の点が挙げられます。
141件の内訳として、健全育成では「不登校・ひきこもり」が27件と最も多く、次に「居場所づくり」が19件の順でした。また、経済的困難では 「生活支援」が23件と最も多く、次に「学習支援」が21件でした。
「不登校・ひきこもり」については、すべての申請が不登校児童・生徒への支援活動でした。
また、「生活支援」については、生活困窮状態にあるシングルマザーへの支援(育児相談、食事支援、就労支援)や子ども食堂の案件が多くみられました。
全国の地区ごとの申請件数が全体に占める割合は、高い順に関東甲信越(58件,41.1%)、関西(22件,15.6%)、東海(15件,10.6%)、東北(12件,8.5%)、九州(10件,7.1%)、中国、四国(各7件,5.0%)、北海道(6件,4.3%)、北陸(4件,2.8%)でした。
選考のプロセス
選考に際しては、募集要項に示した「選考のポイント」に基づき、事務局による一次審査(書類審査)を行った後、選考委員による審査を行いました。申請内容に対する各委員からの質問等については、当該団体にヒアリングを行い、個別に回答をいただきました。
選考委員会では、「生物多様性の保全に関する活動」と「子ども分野に関する活動」、それぞれを分けて開催し、審議しました。
この結果、「生物多様性の保全に関する活動」に関しては11団体を選出させていただきました。このうち7件に関しては、選考委員会における選考委員からの意見を踏まえ、団体の成長につなげていただくこと目的に、事業目標等について、新たなKPIを設定していただく等を条件とした条件付採択とさせていただきました。
助成金額については、選考委員会で挙げられた各案件に対する条件等も踏まえて検討した結果、当初予算を上回る7,210,000円に決定しました。
また、「子ども分野に関する活動」に関しては、「子どもの健全な育成を支援する活動」26団体、「経済的困難を抱える子どもを支援する活動」8団体、「特定課題(児童虐待防止)の活動」9団体の計43団体を選出させていただきました。
この中で、特に本件助成活動を通じて得られた知見や成果等の記録・発信(報告会の開催、報告書の作成・活用等)に波及効果が期待される提案をされた6団体に対しは、当初申請額の20%を増額助成させていただきます。
また、本助成事業では、採択後に申請内容をベースに、あらためて1年間の活動目標を設定していただく枠組みとなっていることから、申請事業や団体の成長に結び付けるために必要な組織基盤(人材育成、自主財源率を高める工夫等)の充実等について、目標や計画の一部を見直していただく「条件付き採択」が31件となりました。
その後、2団体からご辞退のお申し出があったため、最終的には41団体(継続団体14件)に総額35,105,000円の助成となりました。
選考のポイント
今年度の選考に際しては、募集要項に明記した通り、以下の点について確認しました。
(1) 生物多様性の保全に関する活動
-
活動対象地域における現状と課題の理解
活動対象地域における、生物多様性保全に関する課題と現状が可能な限り定量的にとらえられているか - 2
目標(活動目標及び成果目標)並びに成果の測定手法の設定
活動対象の変化・向上のため、1年間の活動目標とその成果目標がそれぞれ明確に設定されているか。あわせて、活動の成果(アウトカム)を可能な限り定量的に測定するための適切な手法の提案があるか - 3
現実的かつ具体的な計画性
外部ネットワークの活用等を含め、1年間で実施する現実的かつ具体的な計画が立てられているか。また、申請予算が計画と整合し、適正かつ妥当性・効率性のある金額となっているか - 4
積極的な情報発信及び活動の継続性・普及・拡大の工夫
受け手を意識した積極的かつ効果の高い情報発信の方法が具体的に提案されているか、また、助成期間終 了後も活動の継続性が見込めるか。他地域への水平展開、他団体への提案・アドバイス等を含め、活動の中で得られた知見・ノウハウを普及・拡大させる工夫があるか
(2) 子ども分野に関する活動
- 1
目標(活動の上位目標、活動目標及び成果目標)並びに成果の測定手法の設定
子どもを取りまく望ましい社会の姿を見据え、団体のめざす社会的な役割が、分かりやすく設定されているか等 - 2
子どもを取り巻く地域課題・子どものニーズの理解
活動対象地域における特有の現状として、子どもを取り巻く課題や子どものニーズを的確に捉えているか。 - 3
具体的かつ現実的な計画性
現状と課題を踏まえ、外部のネットワークの活用など、具体的かつ現実的な計画が立てられているか。
また、申請予算が活動内容と整合し、適正かつ妥当性・効率性のある金額となっているか。 - 4
積極的かつ効果の高い情報発信
受け手を意識した積極的かつ効果の高い情報発信の方法が具体的に提案されているか。 - 5
活動の継続性と普及・拡大の工夫
助成期間終了後も活動の継続性が見込めるか。また、他地域への水平展開、他団体への提案アドバイス等を含め、活動の中で得られた知見・ノウハウを普及・拡大させる工夫があるか。
選考委員会を終えて
選考委員会の中では、「生物多様性の保全に関する活動」、「子ども分野に関する活動」のいずれのテーマに関しても、両分野における活動への助成は引き続き実施する必要が高いことに加え、多くの団体において、事業を継続するための担い手の育成や組織の体制づくりが課題となっているのではないかという意見が挙がりました。
また、「生物多様性の保全」に関しては、島しょ部や重要里山、重要湿地等における課題にチャレンジする提案についても、採択すべきではないかという意見もあったことから、次年度は、これらの活動に対しても積極的に採択していきたいと考えています。
「子ども分野に関する活動」においては、継続団体については、申請事業が生み出す価値を意識しながら取り組んでいただき、事業や団体の成長につなげていただくことを期待したいといった意見も挙がりました。
最後に、今回、助成対象に選ばれた団体のみなさまには、ニーズの再確認を重ねながら、ご提案いただいた成果が実現されることを期待いたします。一方、惜しくも助成対象とならなかった団体のみなさんには、来年の応募にも、ぜひ再度挑戦していただくことを期待いたします。
選考委員
委員長 川北 秀人 IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人
(生物多様性の保全)
委員 渡辺綱男 一般社団法人 自然環境研究センター上級研究員
委員 武田有紀 株式会社NTTドコモサステナビリティ推進室長
(健全育成、経済的困難)
委員 村木厚子 津田塾大学特任教授
委員 武田有紀 株式会社NTTドコモサステナビリティ推進室長