2025年度 ドコモ市民活動助成(子ども分野)の選考を終えてSubsidized List
2025年度 ドコモ市民活動助成(子ども分野)の選考を終えて
はじめに
ドコモ市民活動団体助成事業は、子どもたちの健やかな育ちを応援する活動に取り組む全国のNPOを支援するため、2003年から22年間で延べ1,163団体に対し、約6億8千万円の助成を行いました。また、2018年度からは、深刻な児童虐待事件が相次いでいる状況を踏まえ、「児童虐待防止活動」を特定課題として位置づけ、採択率を高めに設定し、重点的に支援しております。
今年度の公募と申請状況
2025年度は、2025年2月18日から3月31日の公募期間に153団体(うち継続26団体)から申請をいただきました。その内訳は、「子どもの健全な育成」101団体、「特定課題(児童虐待防止)」14団体、「経済的困難を抱える子ども支援」38団体で、昨年度より7団体増加しました。地域別では、関東甲信越67団体、関西27団体、東海・九州各14団体、東北9団体、中国8団体、北海道・四国各6団体、北陸2団体と、全国各地からご応募いただきました。お忙しい中、申請をご準備くださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。
選考のプロセス
選考にあたっては、募集要項に示した「選考のポイント(5項目)」に基づき、課題解決に向けた提案内容や施策の妥当性について、事務局(3名)と選考委員がすべての申請内容を確認しました。選考委員からの質問事項については、事務局が申請団体に書面でヒアリングを行い、その回答を踏まえて選考委員会で審議を行いました。
その結果、「子どもの健全な育成」で22団体(うち継続8団体)、「経済的困難を抱える子ども支援」で6団体(うち継続3団体)、「特定課題(児童虐待防止)」で4団体(うち継続2団体)、計32団体に対し、総額29,055,000円の助成を決定しました。
このうち、活動内容が波及効果を期待される提案に対しては、報告会の開催や報告書の作成・活用等に関わる費用として、当初申請額の20%を増額助成することとし、3団体を選定しました。また、今年度は助成総額に余裕が生じたため、物価高騰による活動縮小を防ぐため、見積額が申請時より上昇した経費については、上限10%の増額を特例的に認めました。
各活動テーマの応募状況と特徴
- 居場所づくり(31件) 申請件数が最も多かったテーマですが、最終選考に残ったのは3件でした。審査では、子どもたちの成長を支える安心できる居場所となりうるか、そしてどのような力を育むことができるかという点を重視しました。しかし、多くの申請が既存事業の維持継続を目的としており、非認知能力など子どもたちに良い変化をもたらす具体的な提案は少数でした。また、子どもの現状やニーズの把握が不十分で、アンケート調査などの工夫も見られなかったため、事業の必要性や緊急性を判断することが困難でした。
- 不登校・ひきこもり(24件) 昨年度はフリースクールの維持が目的の案件が多かったのに対し、今年は文部科学省の「COCOLOプラン」に基づく校内居場所づくりや、学校・保護者との連携支援、学習支援、自然体験などが6割を占めました。ただし、校内居場所づくりでは、学校や教育委員会との調整が不十分な案件が多かったため、実現性の高い提案が最終選考に残りました。また、昨年度に比べて保護者への相談支援を強化する提案も増え、不登校の子どもを持つ保護者の孤立が深刻化している状況への対応に取り組む動きの高まりがうかがえました。
- 障がい(18件) 医療的ケアが日常的に必要な子どもたち(以下、医療的ケア児)への理解促進、医療的ケア児や重度心身障害児の預かりサービス、保護者へのレスパイトケア、相談支援(就労含む)など、双方の孤独・孤立解消を目的とした提案が増えました。2021年に施行された「医療的ケア児支援法」により行政による支援体制の整備は進められていますが、地域間の支援格差は依然として存在します。NPOがこの分野で持続的に支援活動を行うためには、医療・行政等との連携体制、専門人材の確保、資金面での課題が大きな障壁となるため、審査においてはこれらの点を確認しました。
- 生活支援(18件) 子ども食堂などから、物価高騰を背景に運営費補填を求める申請が半数を占めました。一方、子どもの将来の自立につながるような力(自己肯定感、コミュニケーション力など)を育む提案は少数でした。
共通課題と今後への期待
本助成事業では、既存事業の維持継続にとどまらず、これまでの活動を通じて明らかになった新たな課題の解決や、団体としての支援活動をさらに発展させることを重視しています。
しかし2025年度の申請においては、物価高騰の影響から、既存事業の維持・継続を主目的とする提案が半数以上を占めました。その多くは、子どもたちの現状やニーズを十分に掘り下げた分析に基づいておらず、事業の目的と実施手段との間に一貫性を欠く提案が多数見られました。
また、助成期間終了後に活動を安定的に継続していくためには、資金調達の多様化や担い手の育成といった活動基盤の強化が欠かせません。今回の申請団体のうち半数以上が資金難を課題として認識していましたが、その解決に向けた具体的かつ現実的な提案が示されず、一次審査において懸念が示されました。
このため、二次審査(書面ヒアリング等)では、「選考のポイント」を踏まえ、主に以下の3点について確認いたしました。今後ご申請を検討される皆さまには、ぜひこれらの視点を意識してご提案いただきたいと思います。
- 地域における子どもの現状・課題の明確化
子どもを取り巻く現状や課題について、公的な統計だけでなく、日々の活動の中から得られる独自のデータや子ども・保護者の声も交えて具体的に示すこと。その上で、支援の優先対象を明確にし、対象となる子どもたちに確実に届くアプローチを工夫していること。 - 目標設定と成果の検証
活動の成果目標(アウトカム)は「楽しかった」「元気になった」といった主観に留まらず、子どもにどのような具体的な変化や成長が期待できるのかを明確にすること。さらに、その成果を測定するための指標や方法を提示し、定期的に振り返りを行うとともに、事業終了後においても効果を検証できる仕組みを示すこと。 - 継続性
助成期間終了後も活動の継続が見込める、現実的かつ具体的な提案があること。例えば、単に事業を続けるだけでなく、活動を支える人材や資金調達の仕組みを強化するとともに、得られた成果や知見を、報告書等の記録にまとめ、積極的に情報発信し、他地域や他団体と共有する工夫があること。- (例)
-
- 担い手育成:団体スタッフやボランティアが継続して活躍できるためのカリキュラムや研修会の開催など。
- 資金調達:会費、寄付、事業収益といった自主財源率の向上に加え、事業の成果を単なる活動報告にとどめず、工夫した点や子どもへのアプローチ、今後の課題(失敗事例などを含む)を報告書等にまとめ、積極的に発信し、社会と共有すること。
上記の観点について具体的に盛り込まれ提案は高く評価されました。また、取り組みの強化が必要と判断された採択候補団体については「条件付き採択」とし、選考委員からの助言を踏まえ、活動内容や目標の一部見直しをお願いしております(対象22団体)。
むすびに
本助成事業が、採択団体の皆さまの支援活動をさらに進化させ、子どもたちの健やかな成長に寄与することを心より願っています。そして、残念ながら今回は採択に至らなかった団体の皆さまも、お忙しい中でご提案いただいたことに深く感謝申し上げるとともに、ぜひ来年度も挑戦していただけることを心よりお待ちしております。
NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド(MCF)事務局