2019年度ドコモ市民活動団体助成事業選考について(選後評)Subsidized List
2019年度ドコモ市民活動団体助成事業選考について(選後評)
選考委員長 川北 秀人
はじめに
ドコモ市民活動団体助成事業は、将来の担い手である子どもたちの健やかな育ちを応援する活動に取り組む全国のNPOに対して、2003年から16年間で893団体に活動助成を行うとともに、団体と事務局とのコミュニケーションを深め、助成を受けた活動内容等について、MCFのホームページを通じて情報発信していただきました。
また、昨年度より、児童を対象とした深刻な虐待事件が継続的に発生している状況を踏まえて、「児童虐待防止活動」を緊急的かつ重要なテーマと認識し、「特定課題」と位置付けて、同活動に取り組む団体に対してさらに積極的な支援を行うこととしました。
応募状況と選考のプロセス
今年度は、2月25日から3月31日までの公募期間において、「子どもの健全な育成を支援する活動」に102団体から、「経済的困難を抱える子どもを支援する活動」に28団体から、合わせて130団体からご応募いただきました。
昨年度の応募件数(172件)に比べて今年度は減少したことについて、申請書の中で対象者(受益者・当事者)にとって最適な成果を実現するために必要となる事業評価や効果測定手法の提案を求めたこと等が要因として考えられます。一方、ご応募いただいた申請内容を見ると、昨年度までに比べて、成果を意識し、団体内で検討されたことが伝わる、充実した提案が多くなったと感じます。
これらのご応募に対して、募集要項の選考のポイントに基づき、事務局による一次審査(書類審査)を経て、二次審査(面談審査)により選定された51団体からのご提案について、選考委員会において審議した結果、「子どもの健全な育成を支援する活動」17団体、「経済的困難を抱える子どもを支援する活動」12団体、「特定課題(児童虐待防止)の活動」12団体の合計41団体を選出し、このうち活動成果の普及・拡大等が期待できる活動に対して20%の増額助成対象となる8団体を選定しました。
その後、3団体から辞退の申し出があったため、最終的に38団体に総額32,720,000円を助成することが決定しました。
2019年度の選考にあたって
選考に際しては、各団体からの提案が、3年後の対象者(受益者・当事者)や地域社会の状況を予測したうえで、課題を抱える子どもたちや活動地域のニーズの変化に対してどのように備えていこうとしているのか等、募集要項の選考のポイントと合わせて、次の点について確認しました。
-
1
団体としてめざしている目標は具体的かつ明確に設定されているか?
- 2
子どもたちや地域の変化に対して、組織をどのように成長・進化させようとしているのか具体的に説明しているか?
- 3
対象者(受益者・当事者)や地域社会のニーズ把握に努め、優先すべき受益者を特定し、当事者に届くプログラムとなっているのか?また、どれだけの効果を想定しているのか?
- 4
申請内容は、対象者(受益者・当事者)や地域社会にとって緊急性が高く早期に解決しなければならない取り組みか? 等
また、本助成事業では、採択後、申請内容をベースに、あらためて1年間の活動目標を設定していただく枠組みとなっていることから、申請団体の成長に結び付けるために必要な組織基盤(人材育成、自主財源率を高める工夫等)の充実等について、目標や計画を定めていただく「条件付き採択」を実施することとしました。
具体的には、申請事業は対象者(受益者・当事者)にとって必要な活動であったとしても、助成終了後の継続などに鑑みて組織基盤等に課題があると思われる団体には、一定の配慮のもとに、当該課題の解決を条件として採択を決定しました。
まとめ
今年度のご応募における特徴として、経済的困難な子どもへの「学習支援」と「不登校・ひきこもり」をテーマとした申請案件が増加しました。その中で、学習支援については、平成27年に「生活困窮者自立支援法」が施行されて以降、その取り組みが広がっており、民間の個別指導塾のように丁寧な指導方針を導入するという提案も増えています。一方、本助成事業では、子どもたちが育くむべき力について、「学力向上」に限定した支援ではなく、厳しい状況に置かれているからこそ必要となる自己肯定感やコミュニケーション力の向上、さらに生活支援など、より中長期的な観点から成長を育むことに重点をおいた活動により、既存の制度でだけでは行き届きにくい領域を応援することに本事業の意義があると考えます。
助成対象となった団体による活動に、ご提案いただいた成果が実現されることを期待するとともに、惜しくも助成対象とならなかった団体のみなさんには、来年の応募に挑戦していただくことを期待いたします。
選考委員
- 委員長 川北 秀人 IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表
- 委員 村木 厚子 津田塾大学客員教授
- 委員 荒木 正 株式会社NTTドコモCSR部長
- 委員 加藤 薰 NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド(MCF) 理事長