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2019.04.24
ドコモ市民活動団体助成事業

2018年度ドコモ市民活動団体助成事業 中間報告会 開催報告

2019年3月1日(金)に山王パークタワー(東京都千代田区)において、2018年度に採択された42団体の代表のみなさまと、NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド(以下、MCF)理事8名に参加いただき、ドコモ市民活動団体助成事業「中間報告会」を開催しました。
この報告会は、半年間の活動状況報告や有識者によるミニ講義とグループワークを通じて、上期の活動の振り返りと下期にむけての新たな気づきを促す学びを提供することで、参加団体の成長と下期の活動に弾みをつけていただくことを目的に、2016年度から継続的に実施しています。

前半は、代表6団体による半年間の活動状況報告と参加者から発表団体へ「質問やアドバイス」を付箋紙に記入していただき、本助成プログラムの選考委員長である川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表)から、コメントの紹介と併せて発表団体への助言をいただくことにより、団体相互の学びと今後の活動の気づきにつなげました。後半については、川北秀人氏から団体の成長につなげていただくことを目的にミニ講義とグループワークを実施しました。

報告会の様子

峯岸事務局長 挨拶

本日は、お忙しいところ、全国各地からお集まりいただきありがとうございます。この中間報告会は参加団体同士の交流を深めていただくとともに、半年間の活動を通じて得られたノウハウや知見を同じ分野で活動している団体へ水平展開を行うことにより、子どもを取り巻く様々な社会課題の解決につなげていただきたいと考えています。
そのためには、みなさまの成長が不可欠であり、今回、多くの団体が悩まれている「目標設定」の方法や「ニーズの把握」「効果測定」の手法等について、川北秀人様からミニ講義とグループワークをお願いしております。
また、前半に代表6団体のみなさまに活動報告をお願いしておりますが、参加者のみなさまには、報告に対する質問や助言の共有を行っていただき、相互の学び合いの中で、今後の活動をより良いものにしていただければ幸いです。

峯岸事務局長

代表6団体からの活動報告

代表6団体には、半年間の活動内容に加え、「当初目標/得られた成果/残された課題の原因/今後の対策」について、約7分間という短い時間の中で、次のとおり報告いただきました。

団体名:NPO法人ビーンズふくしま
活動名:貧困の中で生きる子どもたちに多様な学びの機会を

  • 報告者 山下 仁子 様
  • 活動の様子

私たちは、様々な理由から不登校やひきこもりとなり、生きにくさを抱えている子どもたちが自ら望む姿で社会とつながることをめざした支援を行っています。助成事業では、私たちがこれまで関わってきた生活困窮世帯の子どもたちと関係機関や協力団体等に対して、現在、県や市から委託を受けて取り組んでいる家庭訪問型事業に加え、子どもたちの多様な学びの機会を提供するために、助成金を活用した「集合型活動」(※)の支援を提供しています。
本助成事業を通じて、「集合型活動」の必要性と有効性を各関係機関に共有することで必要な地域支援への整備、拡充につなげたいと思います。そのために、必要な子ども支援方策やノウハウを蓄積し、他団体への共有をめざしています。

(※)「集合型活動」とは、ビーンズふくしまが提供する、子どもが他者との関わりを通じて自立にむけた力をつける支援

団体名:NPO法人北海道CAPをすすめる会
活動名:子どもの安心・自信・自由を支える北海道&リアスCAP協働事業

  • 報告者 木村 里美 様
  • 活動の様子

私たちはCAP(Child Assault Prevention/子どもへの暴力防止)実践団体です。グループワークの提供を通して社会全体で子どもの人権「安心・自信・自由」が守られるよう活動を推進しています。

助成事業では、東日本大震災後に岩手県沿岸地域に2013年に発足したCAPリアスと協働し、リアス地域におけるプログラム実践者の育成とCAPの普及活動を行うとともに、被災地でのCAPの必要性や意義を今後の活動に活かしていくことを目標に、事業前半では、全国のCAP実践団体が活用できるよう、人材育成スキルアップ測定と実習スタッフ受け入れマニュアルを作成しました。また、昨年、北海道胆振東部地震を経験しましたが、震災直後でも、子どもたちの人権を守る取組みを続けることができる対応をマニュアルに盛り込みました。

事業後半では、CAPリアスのメンバーを北海道に招き、共同でのグループワーク実施と被災地でのCAPの取り組みと意義について学ぶ機会を設けます。東日本大震災で大きな被害を受けながらも、地域の子どもたちのために立ち上がってきた人たちと一緒に、そのニーズを共有しながら、人材育成と地域普及活動に取り組んでいきます。

団体名:NPO法人チャリティーサンタ
活動名:クリスマス時期に経済的困難な子どもを支える協働の仕組みづくり

  • 報告者 清輔 夏輝 様
  • お礼のお手紙

私たちは、クリスマスの夜に、事前に「サンタ研修」を受けたボランティアが一般家庭に訪問し、クリスマスプレゼントを子どもたちに届ける事業を全国各地で展開しています。2008年から活動を開始し、これまで30,000人の子どもたちにプレゼントを届けました。
訪問前には、サンタから子どもたちに伝えてほしいメッセージ(1年間がんばったこと/できるようになったこと/応援してほしいこと)を事前にご家族から聞き、メッセージを添えて子どもたちにプレゼントを渡しています。
助成事業では、私たちの活動を経済的困難な家庭・被災した家庭などに届けるモデルをきちんとロールモデルとして水平展開することを目標としました。現在、出版流通業界や書店業界と連携し、書店を訪れた一般客が購入した本を寄附し、サンタに扮したボランティアが、対象者に本を届ける事業を展開しています。昨年は、200書店と連携しました。購入した本を寄付することで、誰でも寄付できる仕組みを実践しています。企業との協働を通して、私たちの活動を広く知ってもらいたいと考えています。

団体名:公益社団法人ア・ドリームア・デイ・IN TOKYO
活動名:難病児とご家族に夢の旅行を~医療者向け情報発信とWEBを通じたサポーター施策の実施~

  • 報告者 津田 和泉 様
  • 飛行機での移動

私たちは、難病を抱える子どもたちとそのご家族の思い出作りを支援している団体です。
人口呼吸や胃瘻など、医療的ケアが24時間必要となる3歳から18歳までの子どもたちを対象に、年間10~12組のご家族を東京旅行に招待しています。今回の助成事業では、支援の広がりを生みだすため、医療関係者の協力を増やしたいと思っています。
今年度で2年目となる助成事業では、事業の見える化を図り、サポーターの裾野を広げる活動と医療関係者向けにアプローチを図る取り組みを実施するとともに、ご家族の声や旅行を通しての感想・体験談等を調査し、本活動を広く情報発信することとしました。
また、医療関係者との連携強化を図るため、小児血液・がん学会にブース出展し、医療関係者に対面で協力依頼を実施し、事業の詳細について話をする時間を設けることにより、医療者との接点をもつことができ、実際に協力を得ることにつながりました。

団体名:NPO法人ながのこどもの城いきいきプロジェクト
活動名:ながのこどもわくわくカフェ

  • 報告者 小笠原 憲子 様
  • 皆と楽しく・おいしい食事の時間

私たちは、2003年から長野市指定管理者として拠点型こども広場「じゃん・けん・ぽん」を運営し、乳幼児期の子どもや保護者を中心に支援してきました。
「ながのこどもわくわくカフェ」は、乳児期から思春期までの継続した支援を一場所多役(ヒトバショタヤク)という、多機能の場所を創出していることが特徴です。そして、運営委員会を中心に、ボランティア、行政、企業等地域社会のあたたかいつながりのなかで、子どもたちが健やかに成長できる社会めざしています。
2年目となる助成事業では、「ながのこどもわくわくカフェ」の自立に向けて地域の支援体制や実践的なプログラムの構築を目標としました。ボランティア育成を通して、活躍の場も提供できました。ボランティアとして参加しているシニア世代の中には、子どもたちと遊ぶためにジムに通い健康づくりを行っている方もいるなど、居心地の良い居場所となり、地域の子育ち・子育て環境の向上にもつながっています。
また、2019年1月には、長野県の中島副知事が視察に来られ、本取り組みは、社会・経済・環境それぞれの観点からより良い方向にもっていくSDGs(※)のひとつのモデル事業であるということをお話いただき、そのことが団体メンバーの励みとなっています。

(※)「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、持続可能な開発目標として、2015年9月に国連総会で採択された、国際社会共通の目標。

団体名:NPO法人ぎふ多胎ネット
活動名:孤立しがちな多胎家庭を地域につなげるファーストステップ事業

  • 報告者 糸井川 誠子 様
  • 県内各地で年間48回行なっている多胎育児教室

私たちは、双子や三つ子など、多胎家庭を支援する団体です。妊娠期から多胎家庭に必要な情報を提供し、孤立を防ぐための切れ目のない事業を展開しています。 近年の研究では、多胎家庭の虐待件数は、単胎家庭の4倍といわれています。その要因はハイリスク妊娠・出産による母体の回復の遅れに加え、過酷な育児負担、外出困難な育児環境にあるため、このような多胎家庭の孤立を防ぐことが重要であると考え、妊娠期から情報不足や孤立を防ぐ、様々な事業を展開しています。また、そうした取り組みには地域の医療・保健・福祉・保育・教育など関係機関との連携と協働が欠かせません。そこで、私たちは多胎支援事業に地域の関係機関を巻き込むことにも力を注いできました。
長年のこうした取り組みが認められ、「第7回健康寿命をのばそう!アワード」の母子保健分野にて「厚生労働省子ども家庭局長賞 団体部門 優良賞」(※)を受賞しました。
今回の助成事業では、厚生労働省から先進事業として紹介された「産前産後家庭訪問事業」、「保健師の新生児訪問の同行を含む多胎児健診サポート事業」「多胎育児教室事業」を継続するための基盤強化を目的としています。

(※)「健康寿命をのばそう!アワード<母子保健分野>」とは、母子の幸せで健康な暮らしを支援するための健康増進を目的とする優れた取組を行っている企業、団体、自治体を表彰し、これを広く国民に周知することにより、あらゆる世代の健やかな暮らしを支える良好な社会環境の構築を推進することを目的としている。

川北秀人氏によるミニ講義(題名:「ねらい・目標・指標と効果測定について」)

今年度も、ドコモ市民活動団体助成事業の選考委員長であり、また、数多くの助成機関で選考や助成プログラムに対する助言を行っていらっしゃる川北秀人氏に、助成や寄付など資金提供する側の立場から、目標設定、ニーズの把握など、団体の成長につなげていただくための助成金の活用について、ミニ講義とグループワークを行っていただきました。

川北 秀人 氏

目標を明確にする

日本で活動するNPOは、「実現したい社会の理想像」はあるものの、「いつまでに、何を実現するのか」という期限を付けた明確な目標を掲げている団体が少ない。専門家として活動するなら、対象としている受益者(人以外の生き物や自然も)が「今どのような状況にあるのか」を分析し、その将来を予測して、「一歩先の視野をもって、半歩先のプログラムをつくる」ことが必要。そのために、3年間から5年間の範囲で、どのような社会を実現したいのかについて、具体性の高い定量的な目標を設定していただきたい。
そして、問題が起きてから対処するのではなく、当事者自身が見えていない未来を予測し、半歩先のプログラムで当事者を支援することが求められる。みなさんが本気で社会課題を減らそうと思うのであれば、課題が起きる前に、当事者に対して提案・支援ができる団体となるために、明確な目標をつくることが重要だ。

ニーズを把握する

「ニーズって直感的にはわかるけど、どうやって『調べる』のかわからない」との声を耳にすることが多い。「しらべる(research)」とは、かぞえる(count)、くらべる(compare)、たずねる(ask)、さがす(search)の4つの行為で成り立っている。
課題を抱えた子どもの支援を行うならば、支援を必要とする人がどれぐらいいるのかを「かぞえる」。数えた結果は、過去と比べて減ったのか増えたのか、他の地域と比べて高いのか低いのか等を「くらべる」。
そして、当事者が抱えている事情を把握するには、インタビューやアンケートなどで「たずねる」。次に、他の地域でどう取り組んでいるか、先行事例や文献などを「さがす」、学ぶ。
これらの「しらべる」という一連の行為を行うことにより、ニーズを理解し、解決方法を導くことが可能となる。さらに、調べた情報から将来を予測し、仮説を導くことができる。

事業評価と効果測定について

最近、また、「評価が大事」と言われており、その方法として第三者評価を推奨する声を耳にするが、まずは、団体の活動を自ら評価する第一者評価と、活動に参加・利用している「子ども、保護者、地域住民など」が評価する第二者評価をしっかり行うことが大切だ。
そこで、「自分たちの活動は、どれだけ効果があったのか」「当初に立てた仮説は、検証の結果どうだったのか」を自己責任で評価していただきたい。
一般的にNPOの事業評価では、効果測定(パフォーマンス・メジャメント)により、活動の実施前と後の変化を比較し、その効果がどれくらいあるのかを問われるが、これを実施するためには、対象者の状況を、正確に把握(アセスメント)する必要がある。この把握(アセスメント)と効果測定(パフォーマンス・メジャメント)を、みなさんの活動のなかで日常的に繰り返して実施することで、当事者にとって最適な成果を実現するとともに、その実績をアピールできるきっかけとなる。
「我々の活動は数えにくい、測りにくい」とよく言われるが、それは、ものさしを設定する努力が足りないだけ。どうしてもものさしが設定できない領域には、「ルーブリック(rubric)」という達成状況を段階的に評価する方法を用いて、状況の違いを量の概念に置き換えることで、成果や課題の可視化ができる。ぜひ、自分たちの活動を定量的に把握し、自ら率先して効果測定することに慣れていただきたい。

みなさんの団体が大きくなるために、この助成金があるわけではない。みなさんの活動が、社会にもたらす価値やインパクトを意識し、対象者(受益者・当事者)と社会のために、より早く、より大きな変化を起こしていただきたい。

  • グループワークの様子
  • 川北氏のアドバイスを受けながら議論を進めるみなさん

最後は、参加された方同士が握手で「残り半年間、がんばりましょう」と笑顔で言葉を交わしている様子がとても印象的でした。

事務局からのコメント

子どもを取り巻く様々な社会的課題を解決するためには、団体の成長が欠かせないとの思いから、3年前に開催した中間報告会。今回の報告会は、昨年の参加者アンケートでの要望を踏まえ、川北秀人氏によるミニ講義と新たにグループワークの時間を設け、団体間の活発な意見交換を行える場を設定しました。その結果、終了後のアンケートでは、「評価測定の数値化の方法を具体的に考えることができた」「目標を持って計画を進めて結果を出すことの重要性と、その目標の立て方がよく分かった」等の感想をいただき、事務局として非常に喜ばしく感じています。来年度についても、みなさまからのアンケートでいただいた要望等を事務局内で共有し、今後の運営に生かしていきたいと思います。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

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