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2020年度ドコモ市民活動団体助成事業 中間報告会
2021年3月5日(金)に2020年度に採択された団体の皆さま98名とNPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド(以下:MCF)理事等14名に参加いただき、ドコモ市民活動団体助成事業「中間報告会」をオンラインで開催しました。
本報告会では、半年間の活動状況の報告と有識者によるミニ講義を通じて、上期の活動の振り返りと下期にむけての新たな気づきを促す学びを提供することで、各団体の活動をより良いものしていただくことを目的に、継続的に実施しています。
報告会前半では、本助成プログラムの選考委員長である川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者)から、代表6団体の報告内容に対するコメントと助言をいただくとともに、後半では、「組織と事業の基盤」「事業評価」「コロナ禍におけるNPOと活動の在り方」等についてミニ講義を行っていただき、今後の活動の気づきと学びの場となりました。
また、今年度は、一般財団法人非営利組織評価センター(JCNE)が実施している組織評価制度(グッドガバナンス認証制度/ベーシックガバナンスチェック制度)について、業務執行理事の山田様よりご紹介いただきました。
小菅事務局長挨拶
ご参加いただきありがとうございます。現在、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、先が見えない不安な日々が続くなかで、実施事業の変更など、非常に厳しい状況下で工夫を凝らした活動を強いられていると思います。本報告会の開催にあたって、事前にコロナ禍における活動の影響についてWebアンケートを実施しました。本日は、その結果をもとに皆さまがコロナ禍での活動において「工夫したこと」「苦慮したこと」「成功(失敗)したこと」などを共有できる時間を設けておりますので、下期の活動に活かしていただければ幸いです。
代表6団体からの活動報告
代表6団体には、半年間の活動報告に加え、「当初目標/得られた効果/残された課題/今後の対策」について、約7分間という短い時間の中で報告していただきました。
団体名:NPO法人 にじいろクレヨン
活動名:あたたかく見守ってもらえる地域石巻プロジェクト
報告者:吉田 和美 様
当団体は、東日本大震災で被災直後から宮城県石巻市で活動しており、心のケアを行う活動に関する事業を中心に、「仮設住宅訪問活動」や「お絵描き教室」、「プレーパーク」の運営などを通じて、被災地の子どもたちがのびのび過ごせる居場所づくりを行っています。
石巻市は、東日本大震災で既存のコミュニティが崩れたことにより、地域のなかで子育てをめぐる環境が大きく変化しました。「子育てに余裕が持てない・・・」「感情的な言葉を言ったり、叩いたりしてしまう」等、心に余裕が持てず、子育てに不安を抱えている養育者は虐待予備軍の存在になりかねないため、子どもへの直接的支援だけでなく、養育者の支援が必要です。
そこで、本事業では、日常的な子育てから体罰をなくし、親子がより良い関係性を構築するための子育てプログラム「ポジティブ・ディシプリン」を実施し、子どもが子どもらしく、心も身体も傷つくことなく伸び伸びと育つ社会状況の実現をめざします。
新型コロナウイルス感染拡大により、開催の是非について判断を迷いましたが、石巻市では、行政主催の母親学級等の中止や子育て支援施設の休業がつづき、母親たちから子育てに不安を抱える深刻な声が当団体に届くようになったことから、参加人数を16名から10名に制限する等の感染防止対策を講じたうえで、実施することとしました。
実施後の参加者アンケート結果から、「子どもの発達段階を知って、子育てが楽になった」「不安が減った」等、心に余裕がもてるようになり、子育てに対して、前向きな気持ちで向きあえるという、心理的な効果が期待できると考えられます。
今後の課題と対策は、地域コーディネーター、講座ファシリテーター等の人材育成です。また、資金調達基盤の確保のため、「ポジティブ・ディシプリン」の周知・広報活動、また、これまでの活動で培ったネットワークを軸として体制を強化していきたいと考えています。
団体名:NPO法人:子どもパートナーズHUGっこ
活動名:生きづらさを抱える子どもの学びとソーシャルスキル支援事業「わくわくクラブ」
報告者:加藤 典子様
当団体は、福岡県古賀市で子どもと家族、また、そこに関わる支援者や地域社会に対して、発達支援と子育て支援の2つの視点を持って、子どもの育ちの理解とそれを保障する持続可能でインクルーシブな社会を醸成することをミッションとして事業を展開しています。
過去3年間、本市の小学生の自己肯定感を含む生活満足度(「子どものQOL尺度調査」)とレジリエンス調査を実施したところ、子どもたちの自己肯定感は全国調査の結果と同様、低い状況でしたが、地域の大人との交流や集団遊びが自己肯定感やレジリエンスの結果にプラスに影響を与えていることが明らかになりました。失敗しないことよりもむしろ失敗をしてもそれを乗り越えた経験がプラスに影響していると考えられます。そこで、本調査結果をもとに、「発達が気になる」、「家庭的な課題を抱える」等、社会的な生きづらさを抱える小学校低学年の子どもと保護者を対象に一人ひとりのニーズに合った学びとソーシャルスキルを身に付ける「わくわくクラブ」を実施することとしました。これまで17回実施し、参加者はのべ205名(定着率も92.7%)です。子どもの変化としては、大人への暴言、投げやりな態度の子どもが数名いましたが、現在では殆どなくなり、子どもの方から積極的にスタッフに関わるようになるとともに子ども同志の集団遊びにも繋がっています。
これらの活動結果を踏まえ、インクルーシブな社会の醸成をめざし、地域の方々、地域社会に対する段階に応じた研修会を実施し、発達等、様々な課題のある子どもへの理解が深まるような学びを提供しています。
今後の課題と対策ですが、事業全体の課題としては専門スタッフが不足しており、福岡教育大学等とも連携し解決を図っていきたいと考えています。また、個別の支援では、スタッフの研修機会を増やすと共に、家庭での子どもたちの状況を把握するために保護者と情報共有ができる仕組みをつくりたいと思います。
最終的には、自治体の事業として移管されることをめざしていますので、効果検証を行いながら実績を積んでいく所存です。
団体名:認定NPO法人 わははネット
活動名:すべてのひとり親家庭を孤立させないための連携と支援者育成
報告者:中橋 恵美子 様
当団体は、主に香川県を中心に活動しており、今年22年目を迎えます。
未就園の子どもが通う地域子育て支援拠点となる『子育てひろば』の運営や利用者支援事業、子育て情報の配信や子育てタクシーのような業務のほか、企業に働きかけて、働き方改革や様々な子育て家庭をより良くしていくための環境改善のための事業を行っています。
私たちの相談業務の中で日頃感じていることは、子育て家庭において離婚後の一人で子育てをしていくことでのしんどさを相談してくる母親は多いが、離婚に至る前に「離婚について悩んでいること」など夫婦の問題を相談してくる家庭は非常に少ないということです。また衝動的に離婚をしたことで離婚後の生活イメージを具体的に描かないままでの離婚により、思っていたよりも大変でもっとしっかり離婚前に離婚後の生活をイメージして準備をしておくべきだったと後悔している人の話も聞きます。
離婚後の子どもは経済的なこと、精神的なこと等様々な理由で困難を抱えているというケースが多く、離婚をする前に早期に然るべき第三者に相談することで、離婚回避もしくは離婚をしたとしても、事前の協議や準備をしておくことで、経済的あるいは精神的な困難を少しでも回避できるのではないかと思っています。
本事業では最初に数量調査としてWeb調査と紙媒体での調査を行い、次にヒアリング調査を行いました。
本調査に関しては、県内の大学の先生等、専門の方々にも関わっていただきました。
離婚後の心境や離婚の原因、離婚を考えたときに誰に相談したのか、離婚前後で辛かったこと等を聴いています。一方で、子育て支援団体23団体から、夫婦関係についての相談は今まであったかどうか等に関するヒアリングも行いました。
中間報告になりますが、調査結果から「2歳までの子を持つ親では10人のうち2人は夫婦関係に悩みを抱えている」「誰にも相談できないという方が大半であり、夫婦関係の悩みは表面化しにくい」「子どものことを考えるとギリギリまで我慢している」等が見えてきました。
今後についてですが、今回ご協力いただいた専門家の先生を交えて、支援者向け、ひとり親向けの相談プログラムを開発中であり、子育て支援団体に受講いただくとともに子育て支援拠点には,自信を持って相談を受けられるような人材を育成していきたいと考えています。
これからも子どもの幸せのために一緒に考え、伴走できる活動を展開していきたいと思います。
団体名:社会福祉法人 大田区社会福祉協議会
活動名:子どもの居場所づくり事業
報告者:武藤 渓一 様
私たち大田区社会福祉協議会は、地域福祉を増進する中間支援組織であり、大田区で活動するNPO、地域住民の方々と連携し、様々な地域の課題解決にむけた取り組みを行っています。
「大田区子どもの生活実態に関するアンケート調査報告書(大田区福祉部実施H29.3)」により、大田区の子どもの生活実態に関する様々な課題が明らかになりました。これらの結果と子ども家庭支援センターやスクールソーシャルワーカーなどの子ども支援に関わる行政担当者等からのヒアリング結果を踏まえ、当協議会が主体となり、生活困難を抱える家庭の児童を対象とし「学習」「食事」「体験」をベースとした「わくわくホーム」という居場所づくり事業を行いました。
助成事業としては、この「わくわくホーム」のさらなる充実とそれをきっかけに不登校児童の日中の居場所の必要性を実感し「のびのび」事業を始めました。
「わくわくホーム」ついては、2年前から長期休暇(夏・冬)に年2回実施しており、利用者の児童の半数以上が継続して参加しています。専門機関である「生活福祉課のケースワーカー」「教育センターのスクールソーシャルワーカー」「子ども家庭支援センターのワーカー」と連携して対象者を募集していますので、様々な課題を抱えた家庭・子どもに支援が届く仕組みとしています。
次に「のびのび」事業は、昨年10月から毎月第4金曜日に実施し、区内の社会福祉法人、地域住民、不登校経験のある学生ボランティア等の協力を得て学習支援等を実施しています。専門的な対応が必要な子どももいますが、地域住民と連携して学習と体験の機会を提供し、地域で子どもを育てる「見守りの場」としての機能を確立することをめざしています。
今後も、子どもの状況を適切に把握するために積極的にニーズ調査を行い、この2つの事業を充実・発展させていきたいと思います。
今後の課題については、連携する団体・地域住民等が関わりながら、子どもを地域で育てる「見守り体制」が構築できるよう、ボランティアの育成を進めることです。現在、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、当初予定していたプログラム内容を大きく変更しながら実施していますが、助成事業終了後も安定的な事業運営ができる体制づくりを進めます。
団体名:NPO法人 岡山NPOセンター
活動名:学校を超えて地域学を支える民間機関の設立プロジェクト
報告者:西村 こころ 様
当団体は、岡山県内全域のNPOをはじめとした多様な主体とともに地域課題の解決と価値創造を支援者の立場で取り組む民間型の中間支援組織として、「持続可能で自然治癒力の高いまちの実現をめざして」をミッションに掲げ、様々な事業を展開しています。
岡山県内の若者の傾向として、少子高齢化と東京一極集中という状況の中で、大学進学や就職時に都市部に人材が流出し、地域産業と地域の暮らしを支える若い人材が不足するとともに、都市部への一極集中により地域の独自性が失われてきている等の課題が発生しています。
助成事業では、これらの課題に対応するため、地域におけるキャリアへの理解を高める教育(地域学)と社会へのまなざしと関わる姿勢を養う教育(市民教育)を通じて、子どもたちが自らの意思でキャリアを見出し、主体的に考え行動できる社会を実現したいと考えています。これらを実現するためには、既存の学校教育では困難なことから、地域企業やNPOと学校を繋ぐコーディネートを担う民間の支援機関である「ソーシャルアクティブラーニングセンターおかやま(以下:SALCO)」の立上げをめざしています。
SALCOの立上げにあたって、モデルプログラム(「職場体験」「ボランティア体験」等)の開発は、地元の大学と大学生ボランティアと共につくりたいと考えています。また併せて、大学と協働する形でアクティブラーニング(「インターンシップ」等)のモデルプログラム開発にも取り組んでいます。これまでのところ、県内大学3校と連携の可能性が見えており、プログラム開発に大学関係者やインターンシップ受入団体等を巻き込みながら、実施事業の評価や効果検証などの検討会を実施し、プログラムの改善に活かす予定です。また、大学生ボランティアの、参加のすそ野拡大のために、SALCOで総合窓口機能をつくり、月に2回程度相談対応の時間を設けています。加えて、SALCOの公式LINEアカウントを作成し、県内のNPO・NGOボランティア/インターンシップ情報を得ることができる仕組みをつくりました。
残された課題では、SALCOの窓口だけでは大学生と繋がることができないため、学生自ら事業を企画・実施し、主体的・能動的な学びを引き出す機会を提供したいと考えています。
また、助成期間終了後、継続して事業を実施するために、本プログラムの効果を定量的に示す必要があると考えており、アンケート調査を活用し、大学生ボランティアと協働先の受入団体の意識の変化を測り、効果検証を行いながら活動の見える化と実績を積んでいくこととします。
団体名:学校法人 ムンド・デ・アレグリア学校
活動名:外国籍の子どもたちを企業とともに育てる就職支援活動
報告者:松本 雅美 様
当団体は、静岡県浜松市にある南米日系人の外国人学校です。私たちは、「外国籍の子どもたちが日本社会の資源」であると考え、子どもたち自身が日本社会で自己実現できる、キャリア教育の実践に取り組んでいます。
助成2年目も、引き続き、地元企業と連携した「就業体験」、日本語能力向上をめざした教育体制の整備、教員の指導能力向上をめざした人材育成に取り組み、高校卒業後すぐに正規雇用で働ける人材を育てることをめざしています。
少子高齢化を問題として抱える日本にとっては、外国人労働力も非常に大切なものだと考えています。外国籍の子どもたちの進路は①日本での進学②日本での就労③母国での進学の3つに分かれ、母国で進学する場合でも学費を貯めるために、しばらくは日本で働いて進学する子が多い状況です。
本事業では、日本での就職には日本語が不可欠であることから、必要な日本語を習得する日本語強化クラスと更にレベルアップをめざした就職クラスを設けて、就職に特化した内容にしました。
今年度はコロナの影響で就業体験できる機会が大きく減少しましたが、一年目に正規雇用された学生から体験談を話してもらい、身近な先輩から実際の体験を聴くことで、よりモチベーションが上がりました。また、本年度は新型コロナウイルス感染症の影響で職業体験の機会が減少していますが、現在1名が正規雇用の内定をいただいています。
現在、外国籍の子どもたちの就職に向けての企業側の問題として、「外国籍の子どもは扱い難いという考えがある」「親も外国人であることから、信用度が低い」「圧倒的に人材不足、少子高齢化」があります。一方、子ども側の問題として、「話すことは出来ても、中々読み書きが難しい」「日本の慣例や習慣、常識、マナー、礼節を知らない」「日本の正規雇用、非正規雇用の違いを知らない」「面接の仕方であったり、履歴書の記載が出来ない」等の問題があります。
この企業側、子ども側の課題を踏まえて、当団体がマッチングすることで、子どもたちを社会に送り出し、企業側が受け入れるというプラットフォームのような役割を本校が果たすと考えています。
本事業で、外国籍の子どもたちを企業と繋ぎます。そして、このノウハウを最終的にはスキームとして纏めていきたいと思っています。外国籍の子どもたちが日本社会で自己実現して活躍できるよう、そして日本社会が、この資源を活かせるよう社会統合をめざしていきたいと考えています。
(一財)非営利組織評価センター(JCNE)で行っている評価システムについて
(一財)非営利組織評価センター(JCNE)業務執行理事 山田泰久様
一般財団法人非営利組織評価センター(JCNE)山田様より、組織評価制度(グッドガバナンス認証制度/ベーシックガバナンスチェック制度)についてご紹介いただきました。
(2022年11月16日より、公益財団法人日本非営利組織評価センターへ名称変更)
日本の非営利組織(NPO)は、団体設立時には法令に基づき定款をきちんと定めて組織を立ち上げますが、設立後に適切に運用されているか否か確認する機会が少ないことが現状です。
評価は、自団体の「ランク付け」と考えてしまいがちですが、私たちが提案する組織評価は、自団体の組織運営上の不足や不備に気づくきっかけとなり、「健康診断」の役割になると考えています。また、私たちの評価結果のフィードバックから、組織の改善ポイントを考え、組織基盤強化とガバナンス意識向上につなげることも大切です。なにより、第三者評価を受けることは、団体の信用・信頼につながります。受け身の評価ではなく、この評価をどのように活用するのかということが重要です。
川北秀人氏によるミニ講義
川北秀人氏からは、「組織と事業の基盤」と「評価」、そして「コロナ禍におけるNPOと活動の在り方」を中心にお話をいただきました。
組織と事業の基盤について
組織や事業の基盤として、年間事業規模の小さな団体において特に大切なことは、業務品質管理、ボランティア・マネジメント、広報、会議、会計の5つ。これがしっかりできていないと、事業や組織の存続はない。本日はこのうち、業務品質管理とボランティア・マネジメント、広報の3項目に絞って、なぜ重要か、どのような対応が必要かについてお話しします。
業務品質管理
業務品質管理とは、複数のスタッフで団体として業務に取り組む際に、各人の個性として許されるものとは別に、組織として保証しなければならない水準であり、スタッフ全員が超えなくてはならない値のこと。スタッフの業務の品質について一定水準以上を保証するということは、参加者や利用者の目線から見れば最も基本的な約束事であり、参加費などの対価を得たり、外部からの助成金を得て活動している以上、各人の個性として許される範囲と、守らなくてはいけない一定の水準の定義を、予め定めておく必要があります。このとき、知識や、現場を回せる技能だけではなく、会議の開催や記録の作成・公開など組織運営ができることも期待されていることも織り込んでおきましょう。定められた水準を下回っている人がいた時には「それはダメ」、「ここは改善しよう」といったことが言い合える関係・環境を構築することが大切です。
ボランティア・マネジメント
ボランティア・マネジメントは、米国ではNPOの経営に関して、資金調達よりも先に学習するほど重要視されています。まず大切なことは、団体のめざす目標と、その人の価値感が合致しているかどうかを確認しておくこと。そのうえで重要なことは、参加者・利用者を守るための最低限の『ルール』を定めることと、ボランティアを続けてもらうための『感謝』を伝えることです。ボランティアにとって最大のインセンティブは「お金をもらえるから(行こう)」ではなく、「やって(役に立てて・喜んでもらえて)よかった」「また、来たい」という体感が、活動を通して得られるから。ただし、ボランティア自身はその体感を日々の活動を通じて得られているが、そのボランティアのご家族や職場にとっては、一緒に過ごせる時間が奪われているということも事実です。このため、ご家族や職場などに、お礼をお伝えすることで、ボランティアの方の活躍や時間が、どれだけ役立っているかを共有し、ボランティアを続けやすくすることに結び付けることも大切です。
広報
広報は、かつてのように、自分たちの主張をアピールするチラシやパンフレットを配布・郵送する時代とは異なり、現代では、活動を必要とする相手がスマホなどで検索した際に、不安や心配事に応えるための情報開示の方が重要です。そのためには、活動内容や代表者の「熱い思い」だけでなく、団体の役員名簿や年間の事業規模、収支状況等も、ホームページ上に記載すること。その際にも、スマホや小さな画面で閲覧する人も多いことから、PDFのダウンロードではなく、そのまま閲覧できる配慮・工夫も大切です。
活動を知ってもらうことも大事ですが、一方で、組織に対する信頼がなければ、最初の一歩が出て来ません。自分ごととして考えると、初めて団体について知った時に、「この人たちは大丈夫かな」と不安になるのはとても自然なこと。最初の一歩を促すのであれば、広報が上手いか下手かよりも、情報開示がしっかりしていることが重要です。
以上の3点は、事業と組織の基盤として、大切にしましょう。
評価について
NPOだけでなく、企業でも行政でも、事業を行っている組織における評価としては、「事業評価」と2つの「組織評価」があります。
組織評価の1つめは、責任対応力の評価。情報開示がなされている、適法に事業を遂行している、理事が役割を果たしているなど、組織が社会に対する責任を果たせているかを確認すること。もう一つは、人間関係力の評価。スタッフ同士が互いに力を引き出しあえる関係や環境が整っているかを確認することです。
改めて、評価(という手段)の目的は、成果を可視化するだけではなく、課題も可視化することです。上手くいっていることだけではなく、上手くいっていないことについて、原因を把握し、改善を導くために行います。言い換えれば、評価は改善のチャンスです。
参加者数や開催回数など定量的に把握できるものとは違って、子どもの置かれた状況や不安・課題など、定性的な項目について測定する場合は、「もともとどれレベルで、その後どのレベルまで進んだか」という方法で確認するルーブリック(到達度評価)という手法があります。
その評価を誰が行うか、という場合に、自己評価と他者評価(利用者・参加者による顧客評価と、第三者による評価)がありますが、日本ではなぜか第三者による評価を重んじる傾向が強いです。しかし前述の通り、評価は改善のチャンスであり、自分たちの事業は適切に運営できているかを振り返り、点検・確認するためにも、自分のために自分でする評価が重要かつ有効です。そのうえで、他者との比較や外からの指摘を率直に受け止めるために、外部の専門家による第三者評価も取り入れることもできます。
コロナ禍におけるNPOと活動の在り方について
1990年代に民設民営による「せんだいみやぎNPOセンター」を設立し、日本における市民活動支援の先駆者である故・加藤哲夫さんが、東日本大震災の直後に、その支援活動に取り組んだ若者に向けてお話しされたことの一部を紹介します。
「緊急時には、傷口に絆創膏を貼るような仕事が必要となるが、NPOの本来の役割は仕組みを作り、提案し、そして新しい社会構造と参加の仕組みを世の中に位置付けしていくことだ」。つまり、対処療法から原因の解消へ、反射的な対応ではなく、仕組みを作っていくことが大切だということを述べられ、その2か月後に亡くなられました。
言い換えれば、活動の担い手にとって大切なことは、一歩先の視野を持って、半歩先のプログラムを作ることです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応が求められる期間が大幅に長期化しつつある状況下では、緊急避難的なサバイバルの段階から、新たな事業モデルを開発する段階へと進みつつあります。当面この状況が続くこと、そして、感染症への対応を求められなくなったとしても、元に戻らない(不可逆的な)深刻な変化がいくつも起きている状況下では、活動そのものの在り方を進化させてなければならない段階に入っていると言わざるを得ません。
感染症と直接の関係はありませんが、それ以前からの動きとして気掛かりなことがいくつかあります、一点目は「助成や行政が協働と呼んでいるもの」が、委託になってしまっていないかということ。委託は「発注者と受注者」という上下関係であり、難しい課題に挑む団体の成長を促すためではなく、限られた期間内で成果を出すことを無理強いしていないかという懸念があります。二つめは、助成や協働の委託化に伴う、市民活動の社会実験性の低下のリスク。委託化により期限内の成果を約束させられてしまうと、当然ながら、団体は実験や冒険をしなくなり、事業を行う過程においても、新たな気づきや学習の機会が損なわれてしまいかねません。団体にとっても社会にとっても、事業の実施を通じて学ぶことが重要であるにも関わらず、課題や団体の状況にそぐわない成果目標を求めることが、新たなことにチャレンジする機会、つまり社会実験性を下げてしまっているということです。三つめも、実現可能性やvalue for money(投じられた資金によって得られる価値)、社会インパクト評価などを資金提供者側が求めることが、現場をダメにしつつあること。
みなさんが取り組んでいる活動は、調査研究の段階のものもあれば、手法の開発や人材育成を行いながら定着させる(「実装」)段階、そして、他の地域にも拡大する普及・展開の段階という3つの段階があります。みなさんの団体が取り組んでいらっしゃる事業は、どの段階にあるのかを説明し、相手と共有してから、実現可能性や社会インパクトなどについて話すことにしていただきたい。
この観点から、今後、みなさんがドコモ市民活動助成等に申請される際には、活動の受益者である子どもたちに与える影響だけでなく、担い手である団体のスタッフのみなさんが、どう育ったかについても記載していただきたいです。
「この団体は、活動をやりっ放しにするのではなく、社会に対する効果を創出するとともに、組織内の人材育成もしっかりやっている」ということが確認できることは、助成する側にとっても最も重要な価値を持つからです。
締めくくりの確認として、評価においては、事前と事後のアセスメント(状況確認)を大切にしていただきたい。現在はどういう状況で、それがどう変化したかについて、定期的に確認することを、是非、実践していただきたいです。
事務局コメント
今年度の中間報告会は、オンライン開催ということもあり、100名を超える皆さまにご参加いただきました。当日は、Webアンケートを活用し、代表6団体からの報告に対して、他の参加者からコメントとして「質問/助言」をいただきました。参加者から寄せられた「質問/助言」について川北氏から紹介していただき、日頃の活動のなかでの悩みや課題等を全員で共有することができました。
また、実施後の参加者アンケートでは、「Zoomのブレイクアウトルームを活用したグループディスカッションを設け、交流の時間もほしい」等、参加者同士が話し合う場を設けてほしいという意見を多数いただいており、今後のオンラインを活用した中間報告会等の企画、進行に活かしていきたいと思います。本報告会により得られた学びが、子どもたちの更なる支援につながることを期待しています。
ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました。
業務品質管理とは、複数のスタッフで団体として業務に取り組む際に、各人の個性として許されるものとは別に、組織として保証しなければならない水準であり、スタッフ全員が超えなくてはならない値のこと。スタッフの業務の品質について一定水準以上を保証するということは、参加者や利用者の目線から見れば最も基本的な約束事であり、参加費などの対価を得たり、外部からの助成金を得て活動している以上、各人の個性として許される範囲と、守らなくてはいけない一定の水準の定義を、予め定めておく必要があります。このとき、知識や、現場を回せる技能だけではなく、会議の開催や記録の作成・公開など組織運営ができることも期待されていることも織り込んでおきましょう。定められた水準を下回っている人がいた時には「それはダメ」、「ここは改善しよう」といったことが言い合える関係・環境を構築することが大切です。
ボランティア・マネジメントは、米国ではNPOの経営に関して、資金調達よりも先に学習するほど重要視されています。まず大切なことは、団体のめざす目標と、その人の価値感が合致しているかどうかを確認しておくこと。そのうえで重要なことは、参加者・利用者を守るための最低限の『ルール』を定めることと、ボランティアを続けてもらうための『感謝』を伝えることです。ボランティアにとって最大のインセンティブは「お金をもらえるから(行こう)」ではなく、「やって(役に立てて・喜んでもらえて)よかった」「また、来たい」という体感が、活動を通して得られるから。ただし、ボランティア自身はその体感を日々の活動を通じて得られているが、そのボランティアのご家族や職場にとっては、一緒に過ごせる時間が奪われているということも事実です。このため、ご家族や職場などに、お礼をお伝えすることで、ボランティアの方の活躍や時間が、どれだけ役立っているかを共有し、ボランティアを続けやすくすることに結び付けることも大切です。
広報
広報は、かつてのように、自分たちの主張をアピールするチラシやパンフレットを配布・郵送する時代とは異なり、現代では、活動を必要とする相手がスマホなどで検索した際に、不安や心配事に応えるための情報開示の方が重要です。そのためには、活動内容や代表者の「熱い思い」だけでなく、団体の役員名簿や年間の事業規模、収支状況等も、ホームページ上に記載すること。その際にも、スマホや小さな画面で閲覧する人も多いことから、PDFのダウンロードではなく、そのまま閲覧できる配慮・工夫も大切です。
活動を知ってもらうことも大事ですが、一方で、組織に対する信頼がなければ、最初の一歩が出て来ません。自分ごととして考えると、初めて団体について知った時に、「この人たちは大丈夫かな」と不安になるのはとても自然なこと。最初の一歩を促すのであれば、広報が上手いか下手かよりも、情報開示がしっかりしていることが重要です。
以上の3点は、事業と組織の基盤として、大切にしましょう。
評価について
NPOだけでなく、企業でも行政でも、事業を行っている組織における評価としては、「事業評価」と2つの「組織評価」があります。
組織評価の1つめは、責任対応力の評価。情報開示がなされている、適法に事業を遂行している、理事が役割を果たしているなど、組織が社会に対する責任を果たせているかを確認すること。もう一つは、人間関係力の評価。スタッフ同士が互いに力を引き出しあえる関係や環境が整っているかを確認することです。
改めて、評価(という手段)の目的は、成果を可視化するだけではなく、課題も可視化することです。上手くいっていることだけではなく、上手くいっていないことについて、原因を把握し、改善を導くために行います。言い換えれば、評価は改善のチャンスです。
参加者数や開催回数など定量的に把握できるものとは違って、子どもの置かれた状況や不安・課題など、定性的な項目について測定する場合は、「もともとどれレベルで、その後どのレベルまで進んだか」という方法で確認するルーブリック(到達度評価)という手法があります。
その評価を誰が行うか、という場合に、自己評価と他者評価(利用者・参加者による顧客評価と、第三者による評価)がありますが、日本ではなぜか第三者による評価を重んじる傾向が強いです。しかし前述の通り、評価は改善のチャンスであり、自分たちの事業は適切に運営できているかを振り返り、点検・確認するためにも、自分のために自分でする評価が重要かつ有効です。そのうえで、他者との比較や外からの指摘を率直に受け止めるために、外部の専門家による第三者評価も取り入れることもできます。
コロナ禍におけるNPOと活動の在り方について
1990年代に民設民営による「せんだいみやぎNPOセンター」を設立し、日本における市民活動支援の先駆者である故・加藤哲夫さんが、東日本大震災の直後に、その支援活動に取り組んだ若者に向けてお話しされたことの一部を紹介します。
「緊急時には、傷口に絆創膏を貼るような仕事が必要となるが、NPOの本来の役割は仕組みを作り、提案し、そして新しい社会構造と参加の仕組みを世の中に位置付けしていくことだ」。つまり、対処療法から原因の解消へ、反射的な対応ではなく、仕組みを作っていくことが大切だということを述べられ、その2か月後に亡くなられました。
言い換えれば、活動の担い手にとって大切なことは、一歩先の視野を持って、半歩先のプログラムを作ることです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応が求められる期間が大幅に長期化しつつある状況下では、緊急避難的なサバイバルの段階から、新たな事業モデルを開発する段階へと進みつつあります。当面この状況が続くこと、そして、感染症への対応を求められなくなったとしても、元に戻らない(不可逆的な)深刻な変化がいくつも起きている状況下では、活動そのものの在り方を進化させてなければならない段階に入っていると言わざるを得ません。
感染症と直接の関係はありませんが、それ以前からの動きとして気掛かりなことがいくつかあります、一点目は「助成や行政が協働と呼んでいるもの」が、委託になってしまっていないかということ。委託は「発注者と受注者」という上下関係であり、難しい課題に挑む団体の成長を促すためではなく、限られた期間内で成果を出すことを無理強いしていないかという懸念があります。二つめは、助成や協働の委託化に伴う、市民活動の社会実験性の低下のリスク。委託化により期限内の成果を約束させられてしまうと、当然ながら、団体は実験や冒険をしなくなり、事業を行う過程においても、新たな気づきや学習の機会が損なわれてしまいかねません。団体にとっても社会にとっても、事業の実施を通じて学ぶことが重要であるにも関わらず、課題や団体の状況にそぐわない成果目標を求めることが、新たなことにチャレンジする機会、つまり社会実験性を下げてしまっているということです。三つめも、実現可能性やvalue for money(投じられた資金によって得られる価値)、社会インパクト評価などを資金提供者側が求めることが、現場をダメにしつつあること。
みなさんが取り組んでいる活動は、調査研究の段階のものもあれば、手法の開発や人材育成を行いながら定着させる(「実装」)段階、そして、他の地域にも拡大する普及・展開の段階という3つの段階があります。みなさんの団体が取り組んでいらっしゃる事業は、どの段階にあるのかを説明し、相手と共有してから、実現可能性や社会インパクトなどについて話すことにしていただきたい。
この観点から、今後、みなさんがドコモ市民活動助成等に申請される際には、活動の受益者である子どもたちに与える影響だけでなく、担い手である団体のスタッフのみなさんが、どう育ったかについても記載していただきたいです。
「この団体は、活動をやりっ放しにするのではなく、社会に対する効果を創出するとともに、組織内の人材育成もしっかりやっている」ということが確認できることは、助成する側にとっても最も重要な価値を持つからです。
締めくくりの確認として、評価においては、事前と事後のアセスメント(状況確認)を大切にしていただきたい。現在はどういう状況で、それがどう変化したかについて、定期的に確認することを、是非、実践していただきたいです。
事務局コメント
今年度の中間報告会は、オンライン開催ということもあり、100名を超える皆さまにご参加いただきました。当日は、Webアンケートを活用し、代表6団体からの報告に対して、他の参加者からコメントとして「質問/助言」をいただきました。参加者から寄せられた「質問/助言」について川北氏から紹介していただき、日頃の活動のなかでの悩みや課題等を全員で共有することができました。
また、実施後の参加者アンケートでは、「Zoomのブレイクアウトルームを活用したグループディスカッションを設け、交流の時間もほしい」等、参加者同士が話し合う場を設けてほしいという意見を多数いただいており、今後のオンラインを活用した中間報告会等の企画、進行に活かしていきたいと思います。本報告会により得られた学びが、子どもたちの更なる支援につながることを期待しています。
ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました。
広報は、かつてのように、自分たちの主張をアピールするチラシやパンフレットを配布・郵送する時代とは異なり、現代では、活動を必要とする相手がスマホなどで検索した際に、不安や心配事に応えるための情報開示の方が重要です。そのためには、活動内容や代表者の「熱い思い」だけでなく、団体の役員名簿や年間の事業規模、収支状況等も、ホームページ上に記載すること。その際にも、スマホや小さな画面で閲覧する人も多いことから、PDFのダウンロードではなく、そのまま閲覧できる配慮・工夫も大切です。
活動を知ってもらうことも大事ですが、一方で、組織に対する信頼がなければ、最初の一歩が出て来ません。自分ごととして考えると、初めて団体について知った時に、「この人たちは大丈夫かな」と不安になるのはとても自然なこと。最初の一歩を促すのであれば、広報が上手いか下手かよりも、情報開示がしっかりしていることが重要です。
以上の3点は、事業と組織の基盤として、大切にしましょう。
NPOだけでなく、企業でも行政でも、事業を行っている組織における評価としては、「事業評価」と2つの「組織評価」があります。
組織評価の1つめは、責任対応力の評価。情報開示がなされている、適法に事業を遂行している、理事が役割を果たしているなど、組織が社会に対する責任を果たせているかを確認すること。もう一つは、人間関係力の評価。スタッフ同士が互いに力を引き出しあえる関係や環境が整っているかを確認することです。
改めて、評価(という手段)の目的は、成果を可視化するだけではなく、課題も可視化することです。上手くいっていることだけではなく、上手くいっていないことについて、原因を把握し、改善を導くために行います。言い換えれば、評価は改善のチャンスです。
参加者数や開催回数など定量的に把握できるものとは違って、子どもの置かれた状況や不安・課題など、定性的な項目について測定する場合は、「もともとどれレベルで、その後どのレベルまで進んだか」という方法で確認するルーブリック(到達度評価)という手法があります。
その評価を誰が行うか、という場合に、自己評価と他者評価(利用者・参加者による顧客評価と、第三者による評価)がありますが、日本ではなぜか第三者による評価を重んじる傾向が強いです。しかし前述の通り、評価は改善のチャンスであり、自分たちの事業は適切に運営できているかを振り返り、点検・確認するためにも、自分のために自分でする評価が重要かつ有効です。そのうえで、他者との比較や外からの指摘を率直に受け止めるために、外部の専門家による第三者評価も取り入れることもできます。
1990年代に民設民営による「せんだいみやぎNPOセンター」を設立し、日本における市民活動支援の先駆者である故・加藤哲夫さんが、東日本大震災の直後に、その支援活動に取り組んだ若者に向けてお話しされたことの一部を紹介します。
「緊急時には、傷口に絆創膏を貼るような仕事が必要となるが、NPOの本来の役割は仕組みを作り、提案し、そして新しい社会構造と参加の仕組みを世の中に位置付けしていくことだ」。つまり、対処療法から原因の解消へ、反射的な対応ではなく、仕組みを作っていくことが大切だということを述べられ、その2か月後に亡くなられました。
言い換えれば、活動の担い手にとって大切なことは、一歩先の視野を持って、半歩先のプログラムを作ることです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応が求められる期間が大幅に長期化しつつある状況下では、緊急避難的なサバイバルの段階から、新たな事業モデルを開発する段階へと進みつつあります。当面この状況が続くこと、そして、感染症への対応を求められなくなったとしても、元に戻らない(不可逆的な)深刻な変化がいくつも起きている状況下では、活動そのものの在り方を進化させてなければならない段階に入っていると言わざるを得ません。
感染症と直接の関係はありませんが、それ以前からの動きとして気掛かりなことがいくつかあります、一点目は「助成や行政が協働と呼んでいるもの」が、委託になってしまっていないかということ。委託は「発注者と受注者」という上下関係であり、難しい課題に挑む団体の成長を促すためではなく、限られた期間内で成果を出すことを無理強いしていないかという懸念があります。二つめは、助成や協働の委託化に伴う、市民活動の社会実験性の低下のリスク。委託化により期限内の成果を約束させられてしまうと、当然ながら、団体は実験や冒険をしなくなり、事業を行う過程においても、新たな気づきや学習の機会が損なわれてしまいかねません。団体にとっても社会にとっても、事業の実施を通じて学ぶことが重要であるにも関わらず、課題や団体の状況にそぐわない成果目標を求めることが、新たなことにチャレンジする機会、つまり社会実験性を下げてしまっているということです。三つめも、実現可能性やvalue for money(投じられた資金によって得られる価値)、社会インパクト評価などを資金提供者側が求めることが、現場をダメにしつつあること。
みなさんが取り組んでいる活動は、調査研究の段階のものもあれば、手法の開発や人材育成を行いながら定着させる(「実装」)段階、そして、他の地域にも拡大する普及・展開の段階という3つの段階があります。みなさんの団体が取り組んでいらっしゃる事業は、どの段階にあるのかを説明し、相手と共有してから、実現可能性や社会インパクトなどについて話すことにしていただきたい。
この観点から、今後、みなさんがドコモ市民活動助成等に申請される際には、活動の受益者である子どもたちに与える影響だけでなく、担い手である団体のスタッフのみなさんが、どう育ったかについても記載していただきたいです。
「この団体は、活動をやりっ放しにするのではなく、社会に対する効果を創出するとともに、組織内の人材育成もしっかりやっている」ということが確認できることは、助成する側にとっても最も重要な価値を持つからです。
締めくくりの確認として、評価においては、事前と事後のアセスメント(状況確認)を大切にしていただきたい。現在はどういう状況で、それがどう変化したかについて、定期的に確認することを、是非、実践していただきたいです。
事務局コメント
今年度の中間報告会は、オンライン開催ということもあり、100名を超える皆さまにご参加いただきました。当日は、Webアンケートを活用し、代表6団体からの報告に対して、他の参加者からコメントとして「質問/助言」をいただきました。参加者から寄せられた「質問/助言」について川北氏から紹介していただき、日頃の活動のなかでの悩みや課題等を全員で共有することができました。
また、実施後の参加者アンケートでは、「Zoomのブレイクアウトルームを活用したグループディスカッションを設け、交流の時間もほしい」等、参加者同士が話し合う場を設けてほしいという意見を多数いただいており、今後のオンラインを活用した中間報告会等の企画、進行に活かしていきたいと思います。本報告会により得られた学びが、子どもたちの更なる支援につながることを期待しています。
ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました。