[活動に至る背景]
文部科学省の平成27年の調査で普通級に在籍する児童生徒中6.5パーセントの児童生徒が学習や生活面での困難があると報告されている。特に本活動の対象となる自己表現が苦手な児童生徒の支援は遅れることが多い。問題行動や学力不振に比べて、教育現場の中で問題視されにくいことが原因の一つだと考えられる。そのため、必要な指導が受けられず、支援が遅れてしまう。
自己表現は重要な生活スキルの一つである。自己表現が適切にできない場合にいろいろな困り感が生まれる。本活動では、これらの現状に対して、児童生徒の特徴に合わせたICT教材を開発する。また、開発したICT教材で毎日繰り返し学習することで自己表現スキルを身につけられるようにする。
[活動状況]
平成28年9月より愛知県を中心に自己表現力支援を受ける児童生徒を募集した。現在5名が参加している。指導者が児童生徒の自宅で直接指導する中で、児童生徒の困り感を把握している。また、保護者などから児童生徒の困り感を聞き出し、児童生徒の個性に合わせたICT教材を作成している。
話型、作文、自己紹介などの自己表現スキルを習得するためのICT教材を作成し、児童生徒のiPadなどのICT機器にインストールする。また、保護者と子どもに教材の使い方を説明し、実践して直接指導する。インストールされた教材を使い、児童生徒は保護者と共に自己表現スキルの訓練をしている。
[成果(アピールポイント含)と反省点]
・自己表現スキルの獲得:児童生徒が場面に応じて、適切に自己表現でき、自身の困り感を周囲に伝えることができるようになった。トレーニングではICT教材でそれぞれの場面を想定した課題を作成し、適切にスキルを使用することを繰り返し学習した。
・作文や日記などの表現スキルの補助:日々の日記や卒業文集などの作文にICT教材を使うことで、認知面で苦手な部分を補助することができた。例えば、漢字の想起が苦手な児童ではICT教材で文章作りをしてから、作文用紙に書くことで無理なく取り組むことができた。日記や作文の分量が増え、子どもに自信をつけることができた。
・保護者の子ども理解:この活動は親子で取り組む活動であり、児童生徒の訓練に保護者も参加してもらった。また、保護者は指導者と連携し、子どもの困り感と向き合い課題を設定することを行った。その結果、保護者が子どもに対する理解を深め、親子の絆を深めることができた。
・生きる力としての自己表現スキルを習得:発達障がいの苦手さは適したトレーニングによって軽減することはあるが、なくなることはない。ICT教材を使って自身の苦手さを補う活動を通して、自分の苦手さに向き合い、具体的な対策法を見つけることができた。