[活動に至る背景]
東日本大震災により市内に唯一の公共図書館が全壊、職員全員を失いました。平成24年に開設した仮設図書館はスペースが狭く、本棚は震災前の1/10以下で、子ども向けの図書はわずかしか置くことができません。「陸前高田こども図書館 ちいさいおうち」は、平成23年11月の開館以降、上記に述べた課題解決のため、児童室の役割を果たすべく活動してきました。現在も子どもたちの充分な読書環境が整っておらず、また子どもたちが安心して過ごせる場所も少ないため、一人でも多くの子どもに心の拠り所となる場所を提供しながら、良い本と出会い、物語世界で心を遊ばせ幸福を味わえる時間を重ねられるよう、子どもとその保護者に寄り添い継続的に支援していく必要があります。
[活動状況]
被災地における子どもたちの読書推進を図るため、「陸前高田こども図書館ちいさいおうち」を運営しています。図書館内には、赤ちゃんから高校生を対象にした質の高い図書を約5,500冊設置し、週5日間開館しました。専門スタッフが常駐し、利用者とのコミュニケーションを大切にしながら、本の貸出、読書案内、読み聞かせを毎日行っています。また、子どもと本を繋ぐための催しとして、親子で楽しむわらべ唄あそびの会、子どもたちも出演するクリスマス会、参加型の図書展示などを行いました。さらに、保育所や学校等へのアウトリーチ(ストーリーテリング、絵本の読み聞かせ、わらべ唄、ブックトーク、講話等)を行い、被災地での子どもたちの読書の裾野を広げています。
[成果(アピールポイント含)と反省点]
【図書館活動】季節や行事にあわせて様々な展示を開催しました。特に「体」をテーマにした参加型の図書テーマ展示が大好評です。展示本を読む毎に手作りカードにスタンプを押し、特製ボードにシールを貼って参加者全員で生き物の模型を作る取り組みを実施しました。達成感を味わいつつ読書欲が高められ、延べ500冊以上の展示本が読まれました。日々子どもたちと本との出会いを工夫した結果、子どもたちの読書力は豊かに成長しています。利用者1,609名。貸出冊数2,715冊。
【子どもと本を繋ぐ行事の開催】
①「わらべ唄あそびの会」専門家の講師を招き、言葉の響きや伝承の唄の心地よさを親子で楽しみ、会場は笑顔で溢れました。参加者から「家庭でもわらべ唄でよく遊ぶようになった」と感謝の声が多く寄せられました。催しを通して言葉の持つ力に気づき、本を読むことへの興味へと発展しています。参加者31名。
②「手作りバザー」子どもだけが購入できる “こども市”には、物語世界を想像させるスタッフ手作りの品が並びました。地域の現状では困難な子どもの買い物体験ができた点も保護者から好評でした。来場者200名。
③「クリスマス会」影絵劇や絵本の読み聞かせなどを行いました。利用者の子や家族も出演、温もりある催しとなりました。参加者47名。
【アウトリーチ】学校や地域行事等へ出張し、依頼に応じて読み聞かせ等を行い、これらの活動が地域に浸透してきました。計8カ所、延べ受益者482名。
〈反省点〉催しの計画等、早めに準備し取り組みたいです。