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ドコモ・モバイル・サイエンス賞

移動通信・情報通信の研究開発等の業績に対する褒賞事業

Winner / Ceremony

第14回(2015年)

第14回ドコモ・モバイル・サイエンス賞 授賞式

2015年10月16日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて第14回ドコモ・モバイル・サイエンス賞の授賞式を開催しました。

今回は、先端技術、基礎科学、社会科学の三部門で24件の応募があり、選考委員会(選考委員長:東京大学名誉教授・羽鳥光俊氏)での厳正かつ公平な審査の結果、先端技術部門で優秀賞1件、基礎科学部門で優秀賞1件、社会科学部門で奨励賞1件、合計3件・14名が受賞しました。授賞式には、文部科学省 研究振興局長 小松弥生様、NTTドコモ代表取締役社長加藤薰様をはじめ、多くのご来賓にご出席いただきました。

先端技術部門の受賞記事です

優秀賞ソーシャルテキストビッグデータの意味的分析技術の研究

国立研究開発法人情報通信研究機構

【グループ代表】
ユニバーサルコミュニケーション研究所
情報分析研究室 室長 鳥澤 健太郎氏

耐災害ICT研究センター
情報配信基盤研究室 室長 大竹 清敬氏

ユニバーサルコミュニケーション研究所
情報分析研究室 研究マネージャー 橋本 力氏
ユニバーサルコミュニケーション研究所 情報分析研究室 主任研究員 呉 鍾勲氏
ユニバーサルコミュニケーション研究所 情報分析研究室 研究員 田仲 正弘氏、水野 淳太氏、Julien Kloetzer氏、川田 拓也氏
ユニバーサルコミュニケーション研究所 情報分析研究室 専門研究員 後藤 淳氏(現日本放送協会)

ユニバーサルコミュニケーション研究所
企画室 専門研究員 藤井 秀明氏

東北大学 大学院情報科学研究科

【グループ代表】
教授 乾 健太郎氏

准教授 岡崎 直観氏

授賞理由

鳥澤氏らは、数10億ページにも及ぶWeb上の日本語テキストを利用して、様々な質問に回答する大規模Web情報分析システムWISDOM Xと、対災害SNS情報分析システムDISAANAを開発するとともに、誰もが利用できるようにWeb上で一般公開している。

WISDOM Xは、出来事間の因果関係、文間の同義や矛盾を認識する意味処理技術、仮説推論技術などを統合し、Web数10億ページを数百台の計算機で解析して、将来起こり得る出来事を尋ねる「どうなる?」型の質問、ものごとの理由を問う「なぜ?」型の質問を含め、様々な質問に回答するだけでなく、さらに仮説まで生成する世界初のシステムである。DISAANAは、WISDOM Xの技術を利用し、「帰宅難民はどこ?」という質問を入力すると、回答だけでなくデマ情報特定の支援も行う技術であり、スマートフォンでも利用可能である。

今後は、社会問題解決、研究開発プラン、観光旅行プランなど、さまざまな場面に活用できるよう、プランや仮説、リスク等が利用者の求める形でまとめられて提示される基盤となることが期待される。

乾氏らは、大規模言語データから広範な言語知識・世界知識を自動獲得し、この大規模知識データベース上での推論に耐える世界最高速の仮説推論方式を開発した。さらに、ネット情報の信頼性分析という重要課題に応用して、東日本大震災後のデマ・誤情報の大規模解析、農産物風評被害の大規模データ解析などに展開した。

仮説推論方式は整数線形計画法を応用した画期的なもので、これによって米国の従来システムより1万倍以上高速に動作する世界最高速の仮説推論システムを実現し、世界で初めて仮説推論の機械学習を実現した。これらはオープンソースとして公開されており、新規性・有用性とも高く評価できる。今後本技術の進展によりサイバー空間と実空間に対する人間の理解を支援し、テキストビッグデータの活用基盤に発展することが期待される。

受賞者の言葉

乾 健太郎氏と鳥澤 健太郎氏
東北大学 大学院情報科学研究科 教授<グループ代表>乾 健太郎氏

言語データの自動解析で巨大知識ベースの構築が可能になりつつある。膨大な知識による推論に耐える世界最高速の仮説推論方式を開発し、論理推論と機械学習の融合に道を開いた。自然言語処理でいま最大の課題は、「書かれていない行間を読むこと」であるが、この解決に役立つ技術のひとつになりうる。

国立研究開発法人情報通信研究機構
ユニバーサルコミュニケーション研究所 情報分析研究室 室長
<グループ代表>鳥澤 健太郎氏

Webのテキストを解析して、さまざまな質問に回答する大規模Web情報分析システムを開発した。質問回答だけでなく、将来起こり得る社会の動きの仮説まで生成するところが「世界初」である。本賞を、4年にわたって取り組んできた研究チームの全員が受賞できたことがとてもうれしい。

基礎科学部門の受賞記事です

優秀賞ナノ構造を用いたテラヘルツ電磁波の画像化技術の開拓と応用

東京工業大学 量子ナノエレクトロニクス研究センター

准教授 河野 行雄氏

授賞理由

河野氏は、半導体量子構造やカーボンナノチューブを用いて、従来よりも格段に高い性能を持つ高感度テラヘルツ検出・高解像度イメージング技術を開発した。また、これを電子材料・デバイス研究に応用して、半導体量子構造2次元電子系の空間ダイナミクスの解明や、グラフェン中ディラックフェルミオンのテラヘルツ電磁波共鳴の観測に成功した。 テラヘルツ電磁波の高感度検出と高解像度イメージングの可能性を示したことは、今後の技術開発のひとつの方向性を示したことになる。その成果は電子材料の分析など多方面への応用が期待されており、実際に河野氏自身が開発した顕微鏡により、半導体2次元系の現象解明にも貢献している。

筆頭での論文掲載も多く、2014年にはGottfried Wagener Prize (German Innovation Award)を受賞。国内外の学会での招待講演は60件を超え、学問的貢献は極めて高く、将来性や体系化も期待される。

テラヘルツ技術は、医療、産業、科学への幅広い応用が期待されている。その成果は、ドコモ・モバイル・サイエンス賞基礎科学部門の優秀賞にふさわしいと考えられる。

受賞者の言葉

河野 行雄氏

低周波である電波と、高周波である光波との中間に位置するテラヘルツ電磁波は、未開拓の領域である。受信機を自作しながら研究を進め、従来よりも格段に高感度なテラヘルツ検出とイメージング技術を開発した。医療、画像計測、半導体検査など、大きな応用の可能性を持っている。

社会科学部門の受賞記事です

奨励賞ソーシャル・ビッグデータを用いた観光・防災政策・意思決定支援社会システム

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
新領域融合研究センター

融合プロジェクト特任研究員 一藤 裕氏

授賞理由

災害復旧等の緊急時においては、政策決定をサポートするために、被害状況や復興度合い、復興スピード等の把握が課題となっていた。一藤氏は、大規模データとリアルタイム情報を駆使することにより、これまで不可能であった複雑要因の構造分析を可能とし、被災地での復旧状況を推定し可視化する意思決定支援システムを開発した。

また、平常時と緊急時の差分を評価するため、復興力評価指標(RI)を提案し、科学的根拠を持つデータに基づいた政策・意思決定の有用性を実証的に明らかにした点を評価したい。

災害等の緊急時に情報通信が果たす役割は極めて大きいが、先の東日本大震災では、緊急時にのみ利用されるシステムが、実際には運用できなかった例も多い。一藤氏が開発した、平常時の観光支援、緊急時の防災・災害政策支援を両立する社会システムの実現は、政府や自治体の緊急時の政策決定に重要な意味を持つ。

今後、こうした研究成果を社会的に活用できれば、政策的意思決定のみならず、企業や教育等、多面的なイノベーションが期待される。

受賞者の言葉

一藤 裕氏

ソーシャル・ビッグデータを使って、政策決定を支援したい。その一歩として、宿泊施設のWeb予約データを収集して、客室稼働率の実データを逆推計するシステムを開発した。さらに、平常時の観光支援と、緊急時の防災・災害政策支援を両立させる社会システムを構想し、政府・自治体等へ提案している。

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