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ドコモ・モバイル・サイエンス賞

移動通信・情報通信の研究開発等の業績に対する褒賞事業

Winner / Ceremony

第19回(2020年)

 

このたび、「第19回ドコモ・モバイル・サイエンス賞」の3部門に応募いただいた、21件の研究業績の中から、「先端技術部門」「基礎科学部門」「社会科学部門」の受賞者を決定しましたので発表いたします。

なお、今年度の授賞式につきましては、新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から中止いたしました。

先端技術部門の受賞記事です

優秀賞領域横断的手法による実世界センシング技術の高度化に関する研究

東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授
川原 圭博(カワハラ ヨシヒロ)氏

授賞理由

川原氏は、家庭用インクジェットプリンタを用いて、紙やPETフィルムなどに、センサやアンテナ、回路基板配線を安価かつ高速に作成する「Instant Inkjet Circuit」技術を開発した。また、自在に加工可能なワイヤレス充電シートを創製し、環境の中に溶け込むようなIoTデバイスの実現への道を拓いた。

川原氏の研究業績は、SDGsやSociety5.0といった領域横断的な価値観が重視される中、様々な分野において、低コスト・多品種少量・オンデマンド生産の拡大や、多様なIoTデバイスの創出に寄与することが期待される。ACM UbiCompでのBest Paper Awardや、日本学術振興会賞など、学術的貢献も大きい。さらに、「ERATO 川原万有情報網プロジェクト」の研究総括、東京大学に新設された「インクルーシブ工学連携研究機構」機構長などの要職を務め、研究成果を大学発ベンチャー2社へ技術移転し、産業界との連携を推進するなど、社会的にも大いに貢献している。

受賞の言葉

川原 圭博氏
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授川原 圭博(カワハラ ヨシヒロ)氏

この度は大変名誉ある賞をいただき感激しています。私はこれまでIoTを構成するデバイスから無線給電、そしてアプリケーションまで、本質的な意味で社会に価値を生み出す研究を目指して、領域横断的な研究に取り組んできました。研究だけで終わらず社会に成果を還元できるよう、これからも精進していきたい

基礎科学部門の受賞記事です

優秀賞空間分割多重光ファイバ通信技術の研究開発

北海道大学 大学院情報科学研究院 教授
齊藤 晋聖(サイトウ クニマサ)氏

授賞理由

齊藤氏は、マルチコア技術とマルチモード技術の組み合わせにより、光ファイバの通信容量を極限まで増加することに成功した。特に、マルチコアファイバにおけるコア間干渉を低減する技術、及びマルチモードファイバ伝送に必須である複数モードの多重技術を考案し、空間分割多重光ファイバ通信技術の基礎を確立した。通信量の増大に伴い、今後20年間に光通信システムの伝送容量を1000倍以上増強する必要があるともされてきたが従来技術では限界があったところ、齊藤氏の研究は1000倍以上の可能性を示し、大きなインパクトを与えた。

平面光波回路(PLC)に基づくモード分割多重伝送のための合分波器は、世界的にもオリジナリティのあるアイデアである。また、元来は長距離幹線の伝送容量を増やす技術であるが、短距離のデータセンタ間通信やチップ間の超短距離通信にも波及効果をもたらし、産業・社会へのインパクトも大きい。Covid-19の影響下で通信の需要が更に増加している現在、非常に注目されるべき成果である。

また齊藤氏は、電子情報通信学会 EXAT研究会副委員長、光ファイバ通信分野の主要国際会議のチェアを務めるなど、光ファイバ通信の分野で世界的に第一人者として認められている。

受賞の言葉

齊藤 晋聖氏
北海道大学 大学院情報科学研究院 教授齊藤 晋聖(サイトウ クニマサ)氏

従来の光ファイバ通信容量の限界を打破するために、マルチコアファイバ技術とマルチモード伝送技術を駆使することにより、伝送容量を1000倍以上増強する可能性を示し、空間分割多重光ファイバ通信の基礎を確立した。一連の成果は、長距離大容量通信だけでなく、データセンタ間通信や超短距離通信等への展開が期待される。

社会科学部門の受賞記事です

優秀賞情報通信分野における法制度設計およびその政策への応用

名古屋大学大学院法学研究科・同 アジア共創教育研究機構 教授
林 秀弥(ハヤシ シュウヤ)氏

授賞理由

林氏は、情報通信市場における競争政策、またその基礎となる法制度の研究に取り組んできた。海外の巨大プラットフォーム台頭、それらに対する規制など、国際的に様々な動きがあり、現在大いに注目される分野である。

林氏は、情報通信に関連する法分野の大半にわたって広範・膨大な業績を挙げており高い評価を得ている。一例として、電気通信事業法の改正経緯をオーラルヒストリーの手法を用いて調査し精緻な分析を行った『オーラルヒストリー電気通信事業法』は、史料として非常に価値ある成果である。一方、AI・ビッグデータ時代の競争法のあり方に関する論文では、日本における議論状況を正確に紹介しつつ、先端的情報通信技術の台頭する現代の競争法の役割につき論じ、競争法分野の国際的トップジャーナルに掲載された。

情報通信政策の実証的評価の意味で、経済学等、他分野の研究者との共同研究にも積極的である。学問的功績に留まらず、情報通信政策への関与、各種提言、学会活動等を通じた社会貢献も多大である。

受賞の言葉

林 秀弥氏
名古屋大学大学院法学研究科・同 アジア共創教育研究機構 教授林 秀弥(ハヤシ シュウヤ)氏

情報通信法制研究は、学際的、国際的、かつ先端的な学問領域であり、私自身もこれまで、主に競争法・政策の観点から、多くの共同研究を通じて、情報通信そのものに限らず、プラットフォームやAI、知的財産の問題等、幅広く研究対象に取り上げてきた。今回、評価点の一つとして、電気通信事業法の歴史研究に関する業績にも光を当てていただいたことは、個別業法の制定史という非常に地味なテーマだけに、大変ありがたいと思っている。今回の受賞を励みに、さらに精進を重ねていきたい。

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